私たちの体は、約600を超える筋肉によって構成されており、その働きによって姿勢を保ち、物体を動かし、内臓の機能を調整しています。
怪我や痛みとも大きく関係しています。
筋肉は大きく3つの種類に分けられ、それぞれが異なる構造と機能を持ちます。
「筋肉・筋繊維」の解剖学
1. 骨格筋(Skeletal Muscle)
骨に付着し、自分の意思で動かせる(随意筋)のが特徴です。体の動きのほとんどを担い、運動や姿勢の維持、体温の産生に関わります。顕微鏡で見ると横縞模様(横紋)が見えるため、「横紋筋」とも呼ばれます。
骨格筋の階層構造
骨格筋は、複数の「束」がさらに小さな「束」の集まりでできている、という階層的な構造をしています。
- 筋肉全体 (Whole Muscle)
- 多数の筋束が集まって、一つの筋肉を形成しています。
- 筋肉全体は、筋外膜(Epimysium)という強靭な結合組織の膜で覆われ、筋肉の形を保ち、隣接する組織との摩擦を減らします。
- 筋束 (Fascicle)
- 数十から数百の筋線維が集まって、筋束を形成します。
- 筋束は、筋周膜(Perimysium)という結合組織の膜で包まれています。この筋周膜の中には、筋肉に栄養を供給する血管や、信号を伝える神経が走行しています。
- 筋線維 (Muscle Fiber/Myocyte)
- 筋肉を構成する個々の細胞であり、細長い円筒形をしています。長さは数ミリから数十センチにも達し、一般的な細胞に比べて非常に大きく、多くの核を持っています(多核細胞)。
- 筋線維の細胞膜は筋線維膜(Sarcolemma)、細胞質は筋形質(Sarcoplasm)と呼ばれます。
- 筋線維の中には、さらに多数の筋原線維が縦に並行して配列しています。
- 筋原線維 (Myofibril)
- 筋肉の収縮を直接行う「最小の機能単位」です。
- 筋原線維は、さらに細い「筋フィラメント」が規則的に並んだ構造、すなわち「サルコメア(Sarcomere:筋節)」が縦に連なってできています。このサルコメアの配列が、横縞模様(横紋)の正体です。
- 筋フィラメント (Myofilament)筋原線維を構成する主要なタンパク質繊維で、主に2種類あります。
- アクチンフィラメント(薄いフィラメント): 主にアクチンというタンパク質でできています。
- ミオシンフィラメント(厚いフィラメント): 主にミオシンというタンパク質でできています。
- サルコメア(筋節)
- 筋原線維を構成する「筋肉の収縮の最小単位」です。Z線(Z-disk)と呼ばれる構造で区切られており、ミオシンフィラメントとアクチンフィラメントが重なり合って配置されています。
- 筋肉が収縮する際には、ミオシンフィラメントの頭部がアクチンフィラメントに結合し、アクチンフィラメントをミオシンフィラメントの間に引き込みます。これにより、サルコメア全体が短くなり、筋肉が収縮します。これを「滑り説(Sliding Filament Theory)」と呼びます。
骨格筋の付属構造
- 筋小胞体(Sarcoplasmic Reticulum: SR): 筋線維の中に張り巡らされた網目状の構造で、カルシウムイオン(Ca²⁺)を貯蔵・放出します。筋肉の収縮にはカルシウムイオンが不可欠です。
- 横行小管(Transverse Tubule: T-tubule): 筋線維膜が内部に深く入り込んだ管状の構造です。神経からの電気信号(活動電位)を筋線維の深部にある筋小胞体へ素早く伝え、カルシウムイオンの放出を促します。
2. 平滑筋(Smooth Muscle)
内臓の壁(胃、腸、血管、膀胱、気管など)を構成し、消化、血液循環、呼吸、排泄といった生命維持に必要な機能を自分の意思とは関係なく(不随意筋)自動的に調整します。横縞模様が見られないため、「平滑筋」と呼ばれます。
- 構造: 細長い紡錘形の細胞が重なり合って層を形成します。骨格筋のような明確なサルコメア構造はありませんが、アクチンとミオシンは存在し、細胞全体が収縮することで機能します。
- 特徴: 収縮速度は遅いですが、持続的な収縮や広範囲の収縮が可能です。
3. 心筋(Cardiac Muscle)
心臓の壁を構成する特殊な筋肉で、一生涯休むことなく収縮と弛緩を繰り返し、血液を全身に送り出すポンプの役割を担います。不随意筋でありながら、骨格筋と同様に横縞模様が見える「横紋筋」の一種です。
- 構造: 筋線維が枝分かれして複雑に連結しており、介在板(Intercalated Disc)という特殊な結合構造で隣接する心筋細胞と結合しています。この介在板によって、電気信号が素早く伝わり、心臓全体が協調して収縮することができます。
- 特徴: 規則的かつ自律的に拍動する「自動能」という特性を持ち、脳からの指令がなくても収縮運動を続けることができます。
このように、私たちの体には異なる特性を持つ筋肉が存在し、それぞれが緻密な構造と連携によって、様々な生命活動を支えています。