スネやふくらはぎをぶつけた・蹴られた|打撲※要注意の症状あり!!

各部位ごとに起こりやすい怪我について

すねやふくらはぎの打撲は、転倒、衝突、または物にぶつかるなど、日常生活やスポーツ活動で非常によく発生する怪我です。

特にすねは骨が皮膚のすぐ下にあるため、比較的軽い衝撃でも強い痛みを感じやすく、また、重症化するとコンパートメント症候群のような深刻な合併症を引き起こす可能性もあるため、注意が必要です。

すね・ふくらはぎの打撲

どんな怪我なのか?

すねやふくらはぎの打撲は、これらの部位に直接的な外力や衝撃が加わることで、骨、筋肉、腱、血管、神経、皮膚などの軟部組織が損傷する状態を指します。いわゆる「打ち身」と同じメカニズムで起こります。

  • すねの構造: すねは、下腿(かたい)の前面部分を指し、主に脛骨(けいこつ)という太い骨と、その周囲を覆う皮膚、わずかな筋肉、腱などで構成されています。脛骨の前面はほとんど筋肉に覆われていないため、非常に打撲の衝撃を受けやすい部位です。
  • ふくらはぎの構造: ふくらはぎは、下腿の後面部分を指し、主に腓腹筋(ひふくきん)とヒラメ筋という大きな筋肉群で構成されています。これらの筋肉はアキレス腱につながり、足首の底屈(つま先を下げる)や膝の屈曲(膝を曲げる)といった動きに関与します。

 

解剖学的に詳しい負傷箇所一覧

すねやふくらはぎの打撲では、衝撃を受けた部位の以下の組織が損傷します。

  • 皮膚と皮下組織:
    • 表皮・真皮: 衝撃で皮膚表面が擦りむけたり(擦過傷)、深い傷になったりすることがあります。
    • 皮下出血: 皮下の毛細血管が破れて出血し、青あざ(内出血)となります。腫れを伴うことも多いです。
  • 骨(脛骨・腓骨):
    • すねの部分では、脛骨(けいこつ)が直接衝撃を受けることが多く、表面の骨膜が損傷したり、骨にひび(亀裂骨折)が入ったり、実際に骨折している可能性があります。
    • ふくらはぎ側であっても、深部に位置する腓骨(ひこつ)に衝撃が伝わり、骨折することもあります。
    • 特に強い衝撃や、繰り返し同じ部位に負荷がかかる場合(シンスプリントとの混同など)、疲労骨折が生じる可能性もあります。
  • 筋肉と腱:
    • すね: 脛骨の周りの前脛骨筋(ぜんけいこつきん)や、足指を動かす伸筋群などが損傷を受けることがあります。
    • ふくらはぎ: 腓腹筋(ひふくきん)やヒラメ筋といった大きな筋肉が直接的な衝撃を受け、筋繊維が損傷したり、内出血を伴う筋挫傷(肉離れ)と類似の状態になったりすることがあります。アキレス腱の打撲も起こりえます。
  • 血管:
    • 衝撃で血管が破れ、内出血(青あざ)や、ひどい場合は血液の塊である血腫(けっしゅ)ができることがあります。特に下腿は筋肉に囲まれた空間(コンパートメント)があり、そこで出血が起こると圧力が高まるリスクがあります。
  • 神経:
    • 下腿には、足の感覚を司る神経(例:浅腓骨神経、脛骨神経など)が走行しています。打撲によりこれらの神経が圧迫されたり、損傷したりすると、しびれや感覚の鈍麻(麻痺)が現れることがあります。

 

どんな症状なのか?

すね・ふくらはぎの打撲の症状は、衝撃の強さや損傷部位によって様々ですが、一般的には以下の症状が見られます。

  • 痛み:
    • 衝撃を受けた直後から、打ち付けた部位に局所的な強い痛みが生じます。
    • 患部を直接押したり、触ったりすると強い圧痛があります。
    • 歩行時や体重をかけるときにも、ズキズキとした痛みや、骨に響くような痛みを感じることがあります。
  • 腫れ(はれ):
    • 損傷部位の周囲が腫れて膨らみます。特にすねは皮膚のすぐ下に骨があるため、腫れが目立ちやすいです。ふくらはぎの筋肉内に出血すると、全体的にパンパンに腫れることがあります。熱を帯びることもあります。
  • 内出血:
    • 皮下の血管が破れることで、皮膚が青紫色に変色します。時間とともに色が変化し(青→緑→黄)、範囲が広がることもあります。重度の場合、広範囲にわたる内出血が見られます。
  • 可動域制限:
    • 痛みや腫れのため、足首や足の指を十分に動かせなくなることがあります。特にふくらはぎの筋肉が損傷すると、足首を反らす(背屈)動きや、つま先立ちをする動きが困難になることがあります。
  • 歩行困難:
    • 痛みが強いため、体重をかけることができず、歩行が困難になったり、足を引きずるような歩き方になったりすることがあります。
  • しびれ・感覚鈍麻:
    • 神経が損傷したり圧迫されたりした場合は、打撲部位の周囲や、その神経が支配する領域にしびれや感覚の鈍さが現れることがあります。

 

どんな点に気をつけるべきなのか?※重要です!!

すね・ふくらはぎの打撲は、軽症に見えても重篤な合併症を引き起こす可能性があるため、以下の点に注意が必要です。特に「コンパートメント症候群」が重症度が高いものです!!

  • 骨折の可能性を強く疑う:
    • すね(脛骨)は骨が皮膚のすぐ下にあるため、打撲の衝撃が骨に伝わりやすく、骨折(ひび、亀裂骨折など)を併発している可能性が非常に高いです。
    • 特に以下の症状がある場合は、骨折を強く疑い、必ず医療機関を受診してください。
      • 体重をかけられないほどの強い痛みがある
      • 特定の場所(骨)を押すと激痛が走る
      • 足の形が明らかに変形している
      • 腫れが異常に大きい、または日に日に悪化する
      • 内出血が広範囲に及ぶ
    • 子供の場合:成長軟骨である骨端線が損傷(骨折)している可能性も高く、見逃すと成長に影響が出るため、特に注意が必要です。
  • コンパートメント症候群の重要性:
    • すねやふくらはぎの筋肉は、それぞれが「コンパートメント」と呼ばれる強固な筋膜で囲まれた区画に収められています。打撲による筋肉内の出血や腫れがひどくなると、このコンパートメント内の圧力(内圧)が異常に上昇することがあります。
    • 内圧が上がりすぎると、区画内の血管や神経が圧迫され、血液供給が阻害されます。これにより、筋肉や神経組織が酸素不足・栄養不足になり、壊死する可能性があります。これがコンパートメント症候群です。
    • 症状: 激しい痛み(特にストレッチで増悪)、しびれ、感覚の鈍麻、足の指が動かせない、足首が動かせない、足が冷たい、脈拍の消失など。
    • 緊急性: コンパートメント症候群は、発症から数時間以内に適切な処置(緊急手術で筋膜を切開し、圧力を解放する)を行わないと、永続的な神経障害(足の麻痺など)や筋肉の壊死、ひどい場合は切断に至る可能性もある非常に危険な状態です。
    • 少しでも疑われる症状(特に、時間の経過とともに痛みが強くなる、しびれが広がる、足の指が動かしにくいなど)があれば、速やかに救急医療機関を受診してください
  • 神経損傷の可能性:
    • しびれや感覚の異常がある場合は、神経が圧迫または損傷している可能性があります。放置すると後遺症につながることもあるため、注意が必要です。
  • 血腫(けっしゅ)の形成:
    • 打撲により皮下や筋肉内に大きな血腫が形成されることがあります。大きな血腫は、痛みが長引いたり、組織の回復を妨げたりすることがあります。

 

応急処置:RICE処置を正しく行う

すねやふくらはぎを打撲した際の基本的な応急処置は、スポーツ外傷の基本である「RICE(ライス)処置」です。怪我をした直後から可能な限り早く行うことで、炎症や腫れを最小限に抑え、回復を早めることができます。特にコンパートメント症候群の予防のためにも重要です。

  • Rest(安静):
    • 患部を動かさず、安静を保ちます。最も重要です。痛みが強い場合は、松葉杖などを使って体重をかけないようにしましょう。無理に動かすと、骨折を悪化させたり、内出血を広げたりする可能性があります。
  • Icing(冷却):
    • ビニール袋に氷と少量の水を入れ、それをタオルなどでくるんで患部に当てて冷やします。直接氷を当てると凍傷になる可能性があるため注意が必要です。
    • 15~20分程度冷やし、一度外して休憩し、腫れや痛みが続く場合は繰り返します。炎症を抑え、腫れや痛みを軽減する効果があります。
  • Compression(圧迫):
    • 弾性包帯やテーピングを用いて、患部を軽く圧迫します。これは、内出血や腫れが広がるのを防ぐ目的で行います。
    • きつく締めすぎると血流障害を起こす可能性があるため、しびれや冷感がないか、足の指の色が悪くないか、脈が触れるかなど、血行状態に常に注意してください。適度な強さで圧迫し、異常があればすぐに緩めましょう。コンパートメント症候群のリスクがあるため、特に慎重に行うべきです。
  • Elevation(挙上):
    • 患部を心臓より高い位置に上げます。座っているときや寝ているときに、足の下にクッションや枕などを置いて高くします。
    • 重力によって血液が患部に集まるのを防ぎ、腫れを軽減する効果があります。

RICE処置はあくまで応急的な処置です。症状が出ている場合は、ご相談ください。