交通事故による「足の甲の怪我・痛み」

交通事故について
交通事故では、足首や足の指だけでなく、足の甲も大きな衝撃を受けやすい部位です。
車内での急ブレーキによる踏み込み、ダッシュボードへの衝突、歩行中や自転車・バイクでの事故による直接的な圧迫やねじれなど、様々な状況で足の甲に過度な負担がかかり、深刻な怪我につながることがあります。
足の甲の怪我は、足の機能に直接影響するため、歩行や日常生活に大きな支障をきたす可能性があり、早期の正確な診断と適切な治療が不可欠です。

交通事故による「足の甲の怪我・痛み」

交通事故における足の甲の怪我の種類

足の甲には、多くの小さな骨(足根骨や中足骨)と、それらを支える靭帯、腱が複雑に配置されており、交通事故の衝撃はそのいずれにも損傷を与える可能性があります。

 

1. 骨折

足の甲の骨折は、交通事故による足の甲の怪我の中で最も重篤なものの一つです。直接的な圧迫や、足首が強くねじれることで発生します。

  • 症状:
    • 激しい痛み: 骨折部に強い痛みが持続し、体重をかけるとさらに悪化します。
    • 著しい腫れと変形: 患部が大きく腫れ上がり、場合によっては肉眼で分かるほどの変形が見られます。
    • 皮下出血: 広範囲にあざができることがあります。
    • 歩行困難: ほとんどの場合、自力での歩行が不可能になります。
  • 種類:
    • 中足骨骨折: 足の指の付け根からかかとに向かう5本の長い骨の骨折。特に第5中足骨の基部骨折(ジェーンズ骨折やアボーン骨折など)は、交通事故でよく見られます。
    • 足根骨骨折: 距骨、踵骨、舟状骨、楔状骨、立方骨など、足首と中足骨の間にある小さな骨(足根骨)の骨折。特に舟状骨骨折は、血流が悪いため治癒に時間がかかることがあります。
    • 疲労骨折: 一度の大きな衝撃ではなく、事故後に長時間の歩行やリハビリで繰り返し負担がかかることで発生することもあります。
  • 特徴: 足の甲の骨は複雑に組み合わさっているため、骨折すると足全体のバランスや機能に影響が出やすく、適切な治療がなされないと慢性的な痛みや機能障害につながることがあります。

 

2. 靭帯損傷・捻挫

足の甲には多くの靭帯が交差しており、これらが損傷することで痛みや不安定性を引き起こします。交通事故では、足の甲が強くひねられたり、足首が捻挫する際に同時に足の甲の靭帯も損傷したりすることがあります。

  • 症状:
    • 痛み: 損傷部位に痛みが生じ、特に足首や足の甲を動かしたり体重をかけたりすると強まります。
    • 腫れ: 患部が腫れ、炎症が起きていることを示します。
    • 不安定感: 特に重度の靭帯損傷の場合、足の甲の関節にぐらつきを感じることがあります。
  • 種類:
    • リスフラン靭帯損傷: 中足骨と足根骨をつなぐ重要な靭帯の損傷。足のアーチ構造を支える役割があり、損傷すると足の機能に甚大な影響を及ぼす可能性があります。見逃されやすく、適切な診断と治療が非常に重要です。
    • その他の足根骨間靭帯損傷: 足の甲の小さな骨同士をつなぐ靭帯の損傷。
  • 特徴: 靭帯損傷は、骨折に比べてレントゲンで分かりにくく、見落とされやすい傾向があります。しかし、放置すると足の不安定性や慢性的な痛み、変形性関節症につながるリスクがあります。

 

3. 腱炎・腱損傷

足の甲には、足指を動かすための多くの腱が走行しています。交通事故での直接的な打撲や、急激な足首の動きによって腱が炎症を起こしたり、損傷したりすることがあります。

  • 症状: 患部の痛み、腫れ、特に指を動かす際の痛み
  • 種類:
    • 伸筋腱炎: 足の甲を通る足指を反らせるための腱(伸筋腱)の炎症。
    • 後脛骨筋腱炎: 足の内側を通る腱ですが、足の甲の痛みとして感じられることもあります。
  • 特徴: 腱の炎症であれば安静や保存療法で改善しますが、断裂した場合は手術が必要になることもあります。

 

4. 打撲(挫傷)

足の甲に直接的な衝撃が加わることで起こります。

  • 症状: 患部の痛み、腫れ、内出血(あざ)が見られます。
  • 特徴: 骨折がない場合でも、内出血や腫れがひどいと歩行が困難になることがあります。

 

5. 神経損傷

足の甲には、足指や足の感覚を司る神経が走行しています。交通事故による骨折や靭帯損傷、あるいは直接的な圧迫によって、これらの神経が損傷する可能性があります。

  • 症状: 患部のしびれ、感覚の麻痺(感覚がない、鈍い)、異常感覚(ピリピリ感、焼けるような痛み)などが現れます。
  • 特徴: 神経損傷は回復に時間がかかることが多く、後遺症として残る可能性もあります。

 

交通事故による足の甲の痛みの特徴と注意点

交通事故による足の甲の怪我や痛みには、その特性上、特に注意すべき点がいくつかあります。

  • 診断の難しさ: 足の甲は骨や靭帯が複雑に入り組んでいるため、レントゲンだけでは分かりにくい骨折や靭帯損傷(特にリスフラン靭帯損傷など)が潜んでいることがあります。正確な診断のためには、CTやMRIなどの詳細な画像検査が必要不可欠です。
  • 見過ごされやすい初期症状: 事故直後は他の重い怪我に意識が向き、足の甲の痛みに気づきにくいことがあります。また、小さな損傷は「ただの打撲」と自己判断されがちですが、放置すると重篤な後遺症につながる可能性があります。
  • 慢性化のリスク: 足の甲の怪我は、足のアーチ構造やバランス機能に直結するため、不適切な治療や放置は慢性的な痛み、足の変形、歩行障害を引き起こすリスクが高いです。関節内骨折やリスフラン靭帯損傷などは、将来的に変形性足関節症や扁平足の原因となることもあります。
  • 早期の専門医受診の重要性: 交通事故による足の甲の痛みや怪我は、自己判断せずに速やかに整形外科などの専門医を受診することが極めて重要です。特に、足の専門医や足関節の専門医がいる病院を選ぶことが望ましいです。早期の正確な診断と適切な治療が、回復を早め、後遺症を防ぐための鍵となります。
  • 法的・補償問題: 交通事故による怪我は、治療費、休業補償、後遺障害の認定など、保険会社との交渉が必要になる場合があります。事故との因果関係を明確にするためにも、早期の受診と詳細な診断書の作成が不可欠です。

交通事故に遭われた場合、足の甲にわずかでも痛みや違和感がある場合は、決して軽視せず、必ず医療機関を受診してください。早期の専門的な対応が、適切な回復と将来的な健康維持のために最も重要です。