スマートフォンの普及により、寝る前にベッドの中でスマートフォンを操作する習慣を持つ方は少なくありません。
しかし、この習慣が、実はぎっくり腰のリスクを高める可能性があることをご存知でしょうか。
直接的な原因ではなくとも、複合的な要因としてぎっくり腰を引き起こす可能性があります。
回り回って、ぎっくり腰になりやすくなります。
ここでは、寝る直前にスマートフォンを見すぎることが、どのようにぎっくり腰につながるのか、簡単にまとめてみました。
寝る前のスマートフォン閲覧とぎっくり腰の意外な関係性
寝る前のスマートフォン閲覧がぎっくり腰を招くメカニズム
寝る前のスマートフォン閲覧がぎっくり腰のリスクを高める要因は、主に以下の3点に集約されます。
- 不自然な姿勢による腰への負担:
- ベッドや布団の中でスマートフォンを閲覧する際、多くの人がうつ伏せで首を上げた状態、あるいは横向きで体を丸めるような不自然な姿勢をとることが多いです。
- これらの姿勢は、首から背中、腰にかけての S 字カーブを崩し、特定の部位に大きな負担をかけます。 特に、腰椎(腰の骨)やその周囲の筋肉、靭帯に継続的なストレスがかかることで、疲労が蓄積し、ぎっくり腰を発症しやすい状態を作り出してしまいます。
- 長時間同じ姿勢でいることは、血行不良を招き、筋肉の柔軟性を低下させる原因にもなります。
- 睡眠の質の低下:
- スマートフォンやタブレットから発せられるブルーライトは、睡眠を促すホルモンであるメラトニンの分泌を抑制することが科学的に指摘されています。
- メラトニンの分泌が抑制されると、入眠が困難になったり、眠りが浅くなったりと、睡眠の質が低下します。
- 質の低い睡眠は、先に述べたように筋肉の疲労回復や損傷の修復を妨げ、腰の筋肉を硬くする原因となります。また、痛覚閾値(痛みを感じる限界点)も低下しやすくなるため、腰のわずかな不調が強い痛みに繋がりやすくなります。
- 自律神経の乱れ:
- 寝る前にスマートフォンからの情報過多や、SNSなどによる精神的な興奮は、交感神経を優位にさせ、心身を覚醒状態に保ちます。
- 本来、寝る前にはリラックスして副交感神経が優位になるべきですが、これが妨げられると自律神経のバランスが乱れます。
- 自律神経の乱れは、筋肉の緊張を慢性化させ、血行不良を引き起こすため、腰回りの筋肉が硬直しやすくなり、ぎっくり腰のリスクを高めます。
スマートフォンがメラトニンに与える影響
スマートフォンがメラトニンの分泌に影響を与える主な理由は、そのディスプレイから発せられる「ブルーライト」にあります。
- ブルーライトによるメラトニン分泌の抑制:
- スマートフォンのディスプレイからは、波長が短くエネルギーの強いブルーライトが多く放出されています。
- このブルーライトは、太陽光にも含まれる光の波長であり、人間の目はブルーライトを感知すると、脳が昼間だと錯覚しやすくなります。
- 夜間、特に就寝前にこのブルーライトを浴びると、脳の松果体からのメラトニン分泌が強く抑制されてしまいます。これにより、本来夜に分泌されるべきメラトニンが十分に増えず、なかなか寝付けない(入眠困難)、または眠りが浅くなる(睡眠の質の低下)といった睡眠障害につながります。
- 体内時計の乱れ:
- メラトニンの分泌が抑制されることで、私たちの体内時計のリズムが乱れてしまいます。
- これにより、夜更かしが習慣化し、朝起きるのがつらくなったり、日中に眠気を感じたりする「睡眠相後退症候群」のような状態を引き起こす可能性があります。
- 年齢による影響の差:
- 研究によると、大人(特に若年成人)は思春期の若者に比べて、ブルーライトによるメラトニン抑制からの回復が遅い傾向があることが示されています。つまり、大人の方がより影響を受けやすい可能性があります。
- 心理的な刺激による覚醒:
- ブルーライトの影響だけでなく、スマートフォンの画面を見ることで得られる情報(SNS、ゲーム、メールなど)は、脳を活性化させ、心理的な興奮や覚醒状態を引き起こします。
- これにより、心拍数や脳活動が高まり、メラトニンの分泌とは別に、体が眠りに入りにくい状態になることもあります。不安や恐怖を感じる「オレキシン」という覚醒物質が分泌される要因となる可能性も指摘されています。
ぎっくり腰予防のための対策
寝る前のスマートフォン閲覧が習慣化している場合は、ぎっくり腰のリスクを低減するために、以下の対策を検討しましょう。
- 就寝前のスマートフォンの使用を控える:
- 理想的には、就寝の1~2時間前にはスマートフォンやPCの使用を中断することをお勧めします。
- 代わりに、読書(紙媒体)、軽いストレッチ、瞑想、リラックスできる音楽を聴くなど、心身を落ち着かせる活動を取り入れましょう。
- 正しい姿勢を意識する:
- どうしてもスマートフォンを見る場合は、背中を丸めず、首を過度に曲げないよう、姿勢に注意しましょう。
- クッションなどを活用して腰や首をサポートし、画面を目線と同じ高さに近づける工夫も有効です。ただし、長時間の閲覧は避けるべきです。
- ブルーライト対策:
- スマートフォンにブルーライトカット機能がある場合は活用し、就寝前は画面の明るさを下げたり、ナイトモードに設定したりすることも有効です。
- 睡眠環境の整備:
- 快適な寝具を選び、寝室の温度・湿度・明るさを適切に保つことで、睡眠の質を高めましょう。
寝る前のスマートフォン閲覧は、直接的なぎっくり腰の原因となりにくい一方で、腰に負担をかける姿勢の習慣化、睡眠の質の低下、自律神経の乱れといった間接的な要因を通じて、ぎっくり腰の発症リスクを高める可能性があります。健康な腰を維持するためにも、この習慣を見直すことが重要です。