過去の怪我とぎっくり腰って、関係ある?

ぎっくり腰について
過去の怪我、特に腰部やその周辺の怪我は、ぎっくり腰の発生に深く関係している可能性が非常に高いです。

一見、直接的な関係がないように思える怪我でも、体のバランスや負担のかかり方に影響を与え、ぎっくり腰を引き起こすリスクを高めることがあります。

過去の怪我とぎっくり腰の関係性

1.過去の怪我が「弱点」を作る

一度怪我をした部位は、完全に治癒したように見えても、組織レベルでは何らかの変化が残っていることが多く、それがぎっくり腰の引き金となる「弱点」となり得ます。

  • 組織の脆弱性: 捻挫や肉離れなど、過去に筋肉や靭帯が損傷した場合、治癒しても完全に元の強度に戻らないことがあります。瘢痕組織(傷跡の組織)は、通常の組織よりも柔軟性に欠け、再度損傷しやすい傾向があります。このような脆弱な部位があると、日常生活の些細な動作でも過剰なストレスがかかり、ぎっくり腰につながりやすくなります。
  • 関節の不安定性: 過去の捻挫や脱臼により、関節の靭帯が緩んだり、関節を支える筋肉が弱くなったりすると、その関節は不安定な状態になります。特に、腰椎(腰の骨)や骨盤周辺の関節が不安定になると、体を支えるバランスが崩れ、腰への負担が増大し、ぎっくり腰のリスクが高まります。
  • 炎症の慢性化: 怪我による炎症が完全に治まらず、慢性的な微細な炎症がくすぶっている場合もあります。このような状態の組織は、外部からの軽い刺激や負担に対しても過敏に反応し、急性の炎症(ぎっくり腰)に発展しやすくなります。

 

2.体の使い方とバランスの変化

過去の怪我をかばうことで、無意識のうちに体の使い方や姿勢が変化し、腰に負担を集中させてしまうことがあります。

  • 代償動作(かばう動き): 怪我をした部位の痛みを避けるために、無意識のうちに他の部位でその機能を補おうとします。例えば、足首の捻挫後にかかと重心になったり、膝をかばって歩いたりすることで、股関節や骨盤、そして腰に不自然な負担がかかるようになります。このような代償動作が慢性化すると、特定の筋肉に過緊張が生じたり、関節の可動域が制限されたりして、腰痛の原因となります。
  • 姿勢の歪み: 長期間にわたる代償動作は、体の歪みや不良姿勢を引き起こすことがあります。猫背や反り腰、左右の肩の高さの違いなどが生じ、これにより腰椎への負担が常に増大し、ぎっくり腰を起こしやすい状態になります。
  • 筋力バランスの不均衡: 怪我をした部位の周辺の筋肉が使われにくくなったり、逆に使いすぎたりすることで、筋力バランスが崩れることがあります。体幹の深層筋(インナーマッスル)が十分に機能しなくなると、腰椎を安定させる力が弱まり、ぎっくり腰のリスクが高まります。

 

3.神経の過敏化

長期にわたる痛みや慢性的な炎症は、神経系にも影響を及ぼすことがあります。

  • 神経の興奮性亢進: 過去の怪我による痛みが長く続いた場合、痛みを伝える神経系が過敏になり、少しの刺激でも痛みを強く感じるようになることがあります。これにより、ぎっくり腰の症状がより激しく現れたり、些細なきっかけで発症しやすくなったりします。

 

4.ぎっくり腰を予防するために

過去の怪我がぎっくり腰のリスクを高めることを理解し、予防策を講じることが重要です。

  • 怪我の適切な対応: 過去の怪我を「治しきった」「もう治った」と過信せず、しっかりと最後まで治し切ることが重要です。特に、筋力や柔軟性の回復、バランス能力の改善に努めましょう。
  • 体幹の強化: 腹筋や背筋といった体幹の筋肉を強化することで、腰椎を安定させ、ぎっくり腰のリスクを減らすことができます。
  • 柔軟性の維持: 定期的なストレッチで、腰部や股関節、ハムストリングスなどの柔軟性を保ち、筋肉の過緊張を防ぎましょう。
  • 正しい姿勢の意識: 日常生活での立ち方、座り方、物の持ち方など、常に正しい姿勢を意識することが腰への負担軽減につながります。
  • 体のサインに注意: 些細な腰の張りや違和感を見過ごさず、早めに休息を取ったり、温めたりするなどの対策を講じましょう。
  • 専門家への相談: 過去の怪我が原因で慢性的な痛みがある場合や、ぎっくり腰を繰り返す場合は、整形外科医や理学療法士に相談し、根本的な原因を探ってもらうことが大切です。

過去の怪我は、体の「履歴」として残り、後のぎっくり腰につながる可能性があります。日頃からのケアと意識で、再発予防に努めましょう。