朝目覚めたときに、怪我をした部分の痛みが強くなっていると感じることはよくあります。これは、夜間の睡眠中に体の状態が変化し、痛みの感じ方に影響を与える複数の要因が重なるためです。主な理由としては、炎症反応の変化、血行の変化、姿勢による圧迫、そして心理的要因が挙げられます。
朝起きたときに、怪我した箇所が痛いのはなぜ?
痛みを強く感じる主な理由
1. 炎症反応と体温の変化
怪我をすると、体は損傷した組織を修復するために炎症反応を起こします。この炎症反応は、痛み物質の放出や組織の腫れを伴います。
- 夜間の体温低下: 夜間から朝方にかけて体温は自然と低下します。体温が下がると、血管が収縮し、血流が悪くなる傾向があります。これにより、日中に活動することで温められ、ある程度循環していた患部周辺の血流が滞り、痛み物質や老廃物が排出されにくくなります。これらの物質が患部に滞留することで、痛みが増すと考えられます。
- 炎症物質の蓄積: 睡眠中は体を動かす機会が減るため、日中に比べて炎症物質や痛み物質が患部に停滞しやすくなります。これも朝の痛みの増強につながります。
2. 血行の変化と筋肉の硬直
睡眠中は活動量が激減するため、患部周辺の血流も低下しやすくなります。
- 血行不良: 血流が滞ると、損傷した組織への酸素や栄養の供給が不十分になり、同時に痛み物質や老廃物の排出も滞ります。これにより、患部の組織が酸欠状態になったり、老廃物が蓄積したりして、痛みが強くなることがあります。
- 筋肉の硬直: 睡眠中は長時間同じ姿勢でいることが多く、患部周辺の筋肉や関節が動かされないことで硬くなりやすくなります。筋肉が硬直すると血行がさらに悪化し、痛みを増強させる悪循環に陥ることがあります。また、硬くなった筋肉が神経を圧迫して痛みを感じる場合もあります。
3. 姿勢による圧迫と関節の不動
寝ている間の姿勢も、朝の痛みに大きく影響します。
- 患部への圧迫: 寝返りが少ない場合や、無意識のうちに怪我をした部分を下にして寝ている場合、長時間にわたって患部に体重や圧力がかかり続けることがあります。これにより血流がさらに阻害されたり、神経が圧迫されたりして、痛みが強くなることがあります。
- 関節の不動: 怪我をした関節を長時間動かさないでいると、関節包(関節を包む袋)や靭帯が硬くなり、動かし始めに痛みを感じやすくなります。特に、関節の周囲の組織に炎症がある場合、不動によってさらに硬直が進み、朝の動き出しで強い痛みを伴うことがあります。
4. 心理的要因と意識の変化
痛みは身体的な要因だけでなく、心理的な要因によっても感じ方が変化します。
- 意識の集中: 日中は仕事や他の活動に集中しているため、痛みに意識が向きにくいことがあります。しかし、朝目覚めたばかりの静かな環境では、他に気を取られるものが少なくなり、自然と痛みに意識が集中しやすくなります。この意識の集中が、痛みをより強く感じさせる一因となることがあります。
- コルチゾールの変化: コルチゾールは、体内で炎症を抑える働きを持つホルモンですが、夜間は分泌量が低下し、朝方にかけて上昇するリズムを持っています。夜間の分泌量低下が、炎症反応や痛みの抑制効果を弱めている可能性も指摘されています。
朝の痛みを和らげるために
朝の痛みを和らげるためには、以下のような対策が有効です。
- 適切な寝姿勢: 患部に負担がかからないような寝姿勢を意識しましょう。必要であればクッションなどを使い、患部の圧迫を避けて挙上するなど工夫します。
- 寝具の工夫: 患部を温めるような寝具(使い捨てカイロは低温やけどに注意)や、体を締め付けないゆったりとしたパジャマを選ぶのも良いでしょう。
- 目覚め時の軽いストレッチ: 痛みが強くない範囲で、ベッドの中でゆっくりと患部を動かしたり、軽くストレッチをしたりすることで、血行を促進し、筋肉の硬直を和らげることができます。
- 温める: 朝起きて痛みが強い場合は、温かいシャワーを浴びたり、ホットパックなどで患部を温めたりすることで、血行が改善し、痛みが和らぐことがあります(ただし、炎症が強い急性期には温めないでください)。
朝の痛みが続く場合や、痛みが悪化する場合は、自己判断せずに専門家に相談するようにしましょう。