温熱治療って、何のためにやるの?

質問数が多い項目【症状編】

温熱治療は、熱を使って体の特定の部位を温めることで、主に痛みの緩和血行促進筋肉の弛緩、そして組織の柔軟性向上を目的とする治療法です。医療機関や整骨院、あるいは家庭でも手軽に行われ、様々な症状の改善に役立てられています。

温熱治療って、何のためにやるの?

温熱治療がもたらす具体的な効果

温熱治療が体にもたらす主な効果は以下の通りです。

 

1. 血行促進

体を温めると、血管が拡張し、血液の流れが良くなります。血行が促進されることで、以下の効果が期待できます。

  • 酸素や栄養素の供給増加: 血液は酸素や栄養素を全身に運びます。温熱により血流が改善することで、損傷した組織や疲労した筋肉への酸素・栄養素の供給が増え、回復を早めます。
  • 老廃物の排出促進: 同様に、痛みや疲労の原因となる乳酸などの老廃物は血液によって運ばれ排出されます。血行促進はこれらの老廃物の除去を助け、症状の改善につながります。
  • 炎症物質の除去: 炎症反応によって生じる痛み物質なども、血流に乗って除去されやすくなります。

 

2. 痛みの緩和(鎮痛効果)

温熱刺激は、痛みを和らげる複数のメカニズムを持っています。

  • 温熱による感覚神経の抑制: 温かさを感じることで、痛みを伝える神経の活動が相対的に抑えられ、痛みの感覚が軽減されます。
  • 筋緊張の緩和: 筋肉の緊張は痛みを引き起こしたり悪化させたりします。温めることで筋肉がリラックスし、緊張が和らぐことで痛みが軽減します。特に、肩こりや腰痛など、筋肉の硬さが原因の痛みに有効です。
  • ゲートコントロール説: 温熱刺激が、痛みの信号が脳に伝わる経路の一部をブロックするという「ゲートコントロール説」も、鎮痛効果の一因とされています。

 

3. 筋肉の弛緩と組織の柔軟性向上

温熱は、硬くなった筋肉や関節周囲の組織(靭帯、腱など)を柔らかくする効果があります。

  • 筋紡錘の活動抑制: 筋肉の過度な収縮を防ぐ働きのある筋紡錘の活動を抑えることで、筋肉がリラックスし、伸張性が向上します。
  • コラーゲン繊維の柔軟性向上: 熱が加わることで、コラーゲンを主成分とする組織(靭帯、腱、関節包など)の粘弾性が変化し、より伸びやすくなります。これにより、関節の可動域が広がり、柔軟性が向上します。リハビリテーションでストレッチや運動療法を行う前に温めることで、効果を高めることができます。

 

温熱治療の種類と適用される症状

温熱治療には様々な方法があり、症状や目的によって使い分けられます。

  • ホットパック:
    • 目的: 慢性的な肩こり、腰痛、関節の痛みなど、広範囲を温めるのに適しています。
    • 方法: 温めたパックを直接、またはタオルを介して患部に当てます。
  • パラフィン浴:
    • 目的: 手足の関節炎、リウマチ、末梢循環障害など、特に手足の細かい関節に適しています。
    • 方法: 温めたパラフィン(ロウ)の中に手足を浸し、ゆっくりと温めます。
  • 温湿布:
    • 目的: 軽度な肩こり、筋肉痛、疲労回復など。手軽に温めたいときに用いられます。
    • 方法: 薬剤が配合された温かい湿布を患部に貼ります。
  • 入浴・温浴:
    • 目的: 全身の疲労回復、リラックス効果、血行促進
    • 方法: 温かいお風呂に浸かることで、全身を温めます。
  • 赤外線療法・超音波療法:
    • 目的: 深部の組織への温熱効果
    • 方法: 機器を用いて、体の深部まで熱を届けます。専門的な医療機関で用いられることが多いです。

 

温熱治療の注意点

温熱治療は安全な治療法ですが、いくつか注意点があります。

  • 急性期の炎症: 怪我の直後や、腫れや熱感、強い痛みがある急性期の炎症がある場合は、温熱治療は避けるべきです。温めることで炎症が悪化し、症状が悪化する可能性があります。このような場合は、冷却(アイシング)が推奨されます。
  • 循環器系の疾患: 重度の心臓病や高血圧など、循環器系に持病がある場合は、温熱刺激が体に負担をかける可能性があるため、医師に相談が必要です。
  • 知覚障害: 感覚が鈍くなっている部位(糖尿病による神経障害など)では、熱さを感じにくく、低温やけどのリスクがあるため注意が必要です。
  • 悪性腫瘍の部位: 腫瘍がある部位への温熱治療は避けるべきです。
  • 感染症の部位: 化膿している部位や感染症がある部位は、温めることで悪化する可能性があります。

温熱治療は、適切に用いれば多くの症状の緩和に役立ちますが、ご自身の症状や体質に合っているか、また適切な方法で行えているかを確認するためにも、不安な場合は専門家に相談するようにしましょう。