「骨盤(こつばん)」の解剖学

解剖学の知識

骨盤は、私たちの体の中心部に位置する複雑な骨格構造であり、複数の骨が組み合わさってできています。

上半身と下半身をつなぐ重要な役割を担っており、安定性、動きの伝達、そして内臓の保護に不可欠です。

骨盤の構造

骨盤を構成する主な骨

骨盤は、大きく分けて左右の寛骨(かんこつ)と、中央に位置する仙骨(せんこつ)、そしてその下にある小さな尾骨(びこつ)の4つの骨で構成されています。

  1. 寛骨(Hip bone/Innominate bone):

    左右に一対ある大きな骨で、各寛骨は、胎児期には独立していた以下の3つの骨が成長とともに融合して形成されます。

    • 腸骨(ちょうこつ、Ilium): 寛骨の最も大きく、上部に広がる部分です。お腹に手を当てた時に触れる、翼状の平たい骨がこれにあたります。後ろ側は仙骨と連結し、前側は恥骨と連結します。
    • 恥骨(ちこつ、Pubis): 寛骨の前下部に位置する骨です。左右の恥骨が中央で結合し、恥骨結合(ちこつこうけつ)という軟骨性の関節を形成します。
    • 坐骨(ざこつ、Ischium): 寛骨の後下部に位置する骨です。座ったときに体重を支える「坐骨結節(ざこつけっせつ)」という突起があります。
  2. 仙骨(Sacrum):

    背骨の一番下、腰椎の下に位置する逆三角形の骨です。5つの仙椎が融合してできており、左右の寛骨と仙腸関節(せんちょうかんせつ)を形成し、強固に結合しています。この関節は非常に安定性が高く、わずかな動きしか許しませんが、上半身の重みを下肢に伝える重要な役割を担っています。

  3. 尾骨(Coccyx):

    仙骨のさらに下にある、3〜5個の小さな尾椎が融合した痕跡的な骨です。仙骨と尾仙関節でつながっています。

 

骨盤の関節と靭帯

骨盤を構成する骨は、複数の関節と強靭な靭帯によってしっかりと連結されています。

  • 仙腸関節(Sacroiliac joint: SI joint):
    • 仙骨と左右の腸骨の間にある関節で、強靭な靭帯(仙腸靭帯など)によって非常に安定しています。
    • わずかな動きしか許しませんが、上半身の体重を効率的に下肢に伝え、歩行時の衝撃を吸収する役割も果たします。
    • この関節の機能不全は、腰痛の原因となることがあります。
  • 恥骨結合(Pubic symphysis):
    • 左右の恥骨が中央で結合している軟骨性の関節です。
    • 妊娠中や出産時には、ホルモンの影響でわずかに緩み、出産を助ける働きがあります。
  • 股関節(Hip joint):
    • 寛骨の外側にある寛骨臼(かんこつきゅう)という深くくぼんだ部分に、大腿骨(だいたいこつ)の頭部(大腿骨頭)がはまり込んで形成される関節です。
    • ボールとソケットのような構造をしており、非常に大きな可動域と安定性を両立しています。
    • 股関節の周囲には、多くの強靭な靭帯(腸骨大腿靭帯、恥骨大腿靭帯、坐骨大腿靭帯など)があり、関節の安定性を補強しています。

 

骨盤の主な役割

骨盤は、その強固な構造と戦略的な位置から、多岐にわたる重要な役割を担っています。

  • 体幹の支持と荷重伝達:
    • 脊柱(背骨)を介して上半身の体重を受け止め、その重みを左右の下肢へと効率的に分散・伝達します。これにより、直立二足歩行を可能にしています。
  • 内臓の保護:
    • 膀胱、直腸、女性では子宮や卵巣などの重要な骨盤内臓器を、骨盤の強固な骨と筋肉の壁が保護しています。
  • 運動機能の基盤:
    • 股関節を介して下肢の動きを可能にし、歩行、走行、跳躍などの運動の基盤となります。
    • 体幹と下肢をつなぐ筋肉(股関節屈筋群、殿筋群、骨盤底筋群など)が多数付着しており、これらの筋肉の働きをサポートします。
  • 出産(女性の場合):
    • 女性の骨盤は、男性に比べて一般的に幅広く、出産時に胎児が通過しやすいような構造をしています。

骨盤は、安定性と柔軟性という相反する要素を高いレベルで両立させている、非常に巧妙な構造体です。その機能が損なわれると、腰痛、股関節痛、歩行障害など様々な症状を引き起こす可能性があります。