ぎっくり腰・激しい腰痛と間違われやすい「尿路結石の発作」

間違えて接骨院に来院されやすい病気・怪我
尿路結石は、腎臓から尿道までの尿の通り道(尿路)に結石ができる病気です。日本人では一生のうちに約10%の人が経験すると言われる、比較的ありふれた疾患です。

接骨院にもぎっくり腰と間違えて、尿路結石の発作の患者さんが来院されることがあります。

結石が体の中で悪さをしてしまって、ぎっくり腰や強めの腰痛と似たような症状を出すことがあります。

接骨院では、尿路結石に関わる治療を行うことは一切不可です。

下記に、尿路結石に関する情報を簡単にまとめましたので、似たような症状が出ている方は、病院(結石に関わる医療機関)を受診することをおすすめします。

ぎっくり腰・激しい腰痛と間違われやすい「尿路結石の発作」

結石の種類と主な成分

結石ができる場所によって、上部尿路結石(腎結石・尿管結石)と下部尿路結石(膀胱結石・尿道結石)に分けられますが、95%は上部尿路結石です。

主な成分としては、以下のものがあります。

  • シュウ酸カルシウム結石
  • リン酸カルシウム結石
  • 尿酸結石
  • その他、シスチン結石など

 

原因

尿路結石ができやすくなる要因は多岐にわたります。

  • 体質的要因: 高カルシウム尿症、高シュウ酸尿症、高尿酸尿症、低クエン酸尿症、低マグネシウム尿症など、尿の成分バランスの異常。
  • 生活習慣:
    • 水分摂取不足: 尿が濃縮され、結石の結晶化が促進されます。
    • 食生活の偏り: 動物性タンパク質、塩分、糖分の過剰摂取、シュウ酸を多く含む食品の過剰摂取など。
    • メタボリックシンドローム: 尿路結石はメタボリックシンドロームの一疾患と位置づけられています。
    • 運動不足
  • 環境要因: 地球温暖化も尿路結石ができやすくなる原因の一つと言われています。
  • 薬剤の影響: 活性型ビタミンD、尿酸排出促進薬、アセタゾラミドなど、一部の薬剤が結石形成を促進する場合があります。

 

症状

結石の大きさや位置によって症状は異なりますが、以下のようなものがあります。

  • 激しい痛み(疝痛発作): 結石が尿管を塞ぐことで、背中や脇腹、下腹部に激しい痛みが現れます。痛みは数分おきに強弱の波があるのが特徴です。外陰部や鼠径部に放散することもあります。
  • 血尿: 結石が尿路の粘膜を刺激することで、肉眼でわかる血尿や、尿検査でわかる尿潜血が見られます。
  • 吐き気・嘔吐: 痛みに伴って吐き気や嘔吐を伴うことがあります。
  • 排尿障害: 結石が尿の通り道を塞ぐと、頻尿や尿意切迫感、排尿時の痛み、尿閉(尿が出ない状態)などの症状が出ることがあります。
  • 無症状: 小さな結石の場合、自覚症状がないこともあります。

 

検査・診断

尿検査で血尿や結晶を確認したり、画像診断(X線検査、超音波検査、CT検査など)で結石の位置、大きさ、数などを確認し、診断します。結石の成分分析も行い、今後の予防に役立てます。

 

治療

治療法は結石の大きさ、位置、症状の有無などによって選択されます。

  1. 保存療法:
    • 鎮痛: 激しい痛みに対しては、鎮痛剤や鎮痙剤を用いて痛みを抑えます。
    • 自然排石の促進: 10mm未満の小さな結石で自然排石が期待できる場合、多量の水分摂取(1日2L以上)や体動(運動)を促し、結石の排出を促します。内服薬で尿管の緊張を緩和することもあります。
  2. 手術療法: 自然排石が困難な大きな結石や、腎機能に影響が出ている場合、痛みが強い場合などに適用されます。
    • 体外衝撃波結石破砕術(ESWL): 体外から衝撃波を照射し、結石を細かく砕いて自然排石を促す方法です。入院せずに治療できることもあります。
    • 経尿道的腎尿管結石砕石術(TUL): 尿道から内視鏡を挿入し、レーザーなどで結石を直接砕いて摘出する方法です。全身麻酔が必要で、数日間の入院を要します。
    • 経皮的腎尿管結石砕石術(PNL): 2cm以上の大きな腎結石に対して、背中から腎臓に穴を開けて内視鏡を挿入し、結石を砕いて摘出する方法です。

 

予防

尿路結石は再発率が高い(5年で約20-50%、20年で80%という報告もあります)ため、治療後の予防が非常に重要です。

  • 十分な水分摂取: 1日2L以上の水分を摂り、尿量を増やすことで尿を薄め、結石の結晶化を防ぎます。特に汗をかく時期や運動後は意識的に摂取しましょう。麦茶やほうじ茶がおすすめです。
  • 適切なカルシウム摂取: 以前はカルシウムを制限すべきと言われていましたが、現在では、適切な量のカルシウム(1日600〜800mg程度)を摂取することが推奨されています。カルシウムが腸内でシュウ酸と結合し、便として排泄されることで、尿中に排出されるシュウ酸の量を減らせます。牛乳、チーズ、豆腐、魚介類などが良いでしょう。
  • シュウ酸の摂取を控える: シュウ酸を多く含む食品(ほうれん草、たけのこ、チョコレート、ココア、紅茶、コーヒー、ピーナッツ、アーモンドなど)の過剰摂取を控えましょう。摂る場合は、カルシウムを同時に摂取したり、ほうれん草のようにアクを抜く(茹でる)ことでシュウ酸を減らす工夫も有効です。
  • 塩分・糖分を控える: 塩分の過剰摂取は尿中カルシウムの排泄を増やし、クエン酸排泄を減らす可能性があります。糖分の摂りすぎも尿中カルシウム排泄を増加させます。
  • 動物性タンパク質の摂りすぎに注意: 動物性タンパク質(肉、魚など)の過剰摂取は尿酸結石の原因となることがあります。
  • プリン体の摂取を控える: 尿酸結石の予防には、プリン体を多く含む食品(肉類、魚介類、干物など)の過剰摂取を控えることが重要です。
  • バランスの取れた食生活と規則正しい生活習慣: 偏った食事や過食、運動不足は結石ができやすい原因となります。
  • 就寝前の水分補給: 就寝中は尿が濃縮されやすいので、夕食を軽めにし、夜遅くの食事を避けるとともに、寝る前にコップ1杯の水を飲むなど工夫しましょう。

尿路結石は再発しやすい病気ですので、治療後も医師の指導のもと、食生活や生活習慣の改善を継続することが大切です。