交通事故で後方から追突された場合、首や腰を中心に、様々な部位に特有の怪我や痛みが生じやすいです。
一見軽微な事故でも、体には大きな衝撃が加わるため、後から症状が現れたり、慢性化したりする可能性があります。
交通事故で後ろから衝突されたとき、どんな怪我・痛みになる?
1.むちうち(頚椎捻挫)
追突事故で最も多く見られる代表的な怪我です。
- 発生メカニズム: 後方からの衝撃により、体が前方に押し出される一方で、頭部は慣性で一瞬後ろに残り、その後、大きく前方へ、さらに後方へとS字状に過伸展・過屈曲されます。この一連の動きで、首の骨(頚椎)とその周辺の筋肉、靭帯、椎間板などに大きな負担がかかり、損傷が生じます。
- 主な症状:
- 首の痛み: 首を動かすと痛む、特定の方向に動かせない、首の付け根が重だるいなど。
- 肩こり・背中の痛み: 首の筋肉とつながっているため、肩や背中上部にかけての痛みが広がることも多いです。
- 頭痛: 首の筋肉の緊張や神経の刺激により、後頭部から側頭部にかけての頭痛が発生しやすいです。
- めまい・吐き気: 自律神経の乱れや、内耳への影響により、めまいや吐き気を伴うことがあります。
- 手や腕のしびれ・だるさ: 首の神経が圧迫されると、肩から腕、指先にかけてのしびれやだるさ、脱力感が生じることがあります(神経根症状)。
- その他: 耳鳴り、眼精疲労、倦怠感、不眠、集中力低下なども見られることがあります。
- 症状出現のタイミング: 事故直後は興奮状態やアドレナリンの影響で痛みを感じにくく、数時間~数日後に症状が現れることがよくあります。
2.腰部の痛み・損傷
追突の衝撃は首だけでなく、体全体、特に腰部にも大きな影響を与えます。
- 腰椎捻挫: 首のむちうちと同様に、腰部の筋肉や靭帯が過度に引き伸ばされたり、捻じれたりすることで損傷します。ぎっくり腰のような強い痛みを感じることがあります。
- 椎間板ヘルニアの悪化・発症: 既に椎間板が弱っていたり、負荷がかかりやすい状態だったりする場合、追突の衝撃が引き金となって椎間板が飛び出し、神経を圧迫して腰の痛みや、お尻から足にかけてのしびれ(坐骨神経痛)を引き起こすことがあります。
- 仙腸関節の歪み: 骨盤の仙腸関節に衝撃が加わり、歪みや炎症が生じて、お尻や足の付け根に痛みが出ることがあります。
3.頭部への衝撃
追突時に頭部がシートやヘッドレスト、車内の構造物などにぶつかることがあります。
- 頭部打撲・脳震盪: 頭を直接強打した場合は、外見上の傷がなくても、脳震盪を起こしている可能性があります。脳震盪の症状(頭痛、吐き気、めまい、意識の朦朧など)は、直後よりも数時間後~数日後に現れることがあるため、注意が必要です。
- 高次脳機能障害: 稀に、脳への深刻なダメージにより、記憶障害、注意障害、感情のコントロールが難しくなるなどの高次脳機能障害が生じることもあります。これは外見からは分かりにくく、後から判明することがあります。
4.手足の怪我
追突の衝撃で、手足がハンドルやダッシュボード、ドアなどに打ち付けられることがあります。
- 打撲・捻挫: 手首、足首、膝、肘などの関節やその周囲を強く打ち付けたり捻ったりして、打撲や捻挫が生じることがあります。
- 骨折・脱臼: 強い衝撃を受けた場合、手足の骨折や脱臼に至ることもあります。特に、膝がダッシュボードに当たる「ダッシュボードニー」と呼ばれる膝の損傷は、後方衝突でよく見られます。
5.胸部・腹部への衝撃
シートベルトをしている場合でも、追突の衝撃で体に負担がかかります。
- シートベルトによる圧迫: シートベルトが体を拘束することで、胸部や腹部に強い圧迫がかかり、肋骨のひびや骨折、内臓(肺、脾臓、肝臓など)の損傷、内出血が起こる可能性があります。シートベルトによるアザや痛みが見られる場合は注意が必要です。
6.精神的な影響
物理的な怪我だけでなく、精神的なストレスも大きな影響を与えます。
- PTSD(心的外傷後ストレス障害): 交通事故の衝撃や恐怖体験がトラウマとなり、事故のフラッシュバック、不眠、不安感、うつ状態などの精神的な症状が現れることがあります。
- ストレス性身体症状: 事故によるストレスが原因で、不眠、食欲不振、疲労感、消化器症状など、身体的な不調が出やすくなることもあります。
事故後の対応の重要性
交通事故で追突された場合、症状がなくても必ず医療機関(整形外科、脳神経外科など)を受診し、医師の診断を受けることが重要です。初期段階での適切な検査と治療が、症状の悪化を防ぎ、早期回復につながります。また、後遺症を残さないためにも、医師の指示に従い、根気強く治療を続けることが大切です。