外科とは、主に手術によって病気やケガを治療する診療科全般を指す、非常に幅広い医療分野です。
薬による治療や手術をしない保存的治療では改善が難しい病気や、緊急性が高い病気、外傷などに対し、メスやその他の医療器具を使い、直接患部を切除したり修復したりすることで治療を行います。
外科医は、大学の医学部を卒業して医師免許を取得した後も、長年にわたり高度な専門知識と複雑な手術手技を学び続ける、経験豊富な医師たちです。
彼らは、体の構造や機能に関する深い理解に基づき、患者さんの命を救い、病状を改善し、生活の質(QOL)を向上させることを目指します。
外科とは何か?
外科の基本的な役割
外科の医師は、診断から術後の管理まで、一貫して患者さんの治療に携わります。
- 診断: 身体診察、画像診断(レントゲン、CT、MRIなど)、血液検査などを通じ、手術が必要か、どのような手術が最適かを判断します。
- 手術: 病変部を切除する、損傷した組織を修復する、機能が低下した部位を再建するなど、さまざまな目的で手術を行います。
- 術後管理: 手術後の合併症の予防、痛みの管理、回復期のサポート、リハビリテーションの指示など、患者さんが回復するまでの過程を管理します。
外科の主な専門分野
「外科」と一言で言っても、扱う臓器や病気の種類によって、非常に多くの専門分野に細分化されています。病院の規模や専門性によって、これらの外科が独立した診療科として存在する場合もあれば、まとめて「外科」として診療が行われる場合もあります。
- 一般外科:
- 消化器外科(胃、大腸、肝臓、胆道、膵臓など消化器全般の病気)を指すことが多いです。
- 乳腺外科や甲状腺外科も含まれることがあります。
- 虫垂炎、胆石症、消化器のがん(胃がん、大腸がん、肝臓がんなど)、ヘルニア(脱腸)などが主な対象です。
- 心臓血管外科:
- 心臓や大血管(大動脈、冠動脈など)の病気を扱います。
- 狭心症や心筋梗塞に対する冠動脈バイパス手術、心臓弁膜症に対する弁置換術、大動脈瘤の手術などが含まれます。
- 脳神経外科:
- 脳、脊髄、末梢神経の病気やケガを扱います。
- 脳出血、くも膜下出血、脳腫瘍、頭部外傷、椎間板ヘルニアの一部、脊髄損傷などが主な対象です。
- 整形外科:
- 骨、関節、筋肉、靭帯、神経などの運動器の病気やケガを扱います。
- 骨折の手術、人工関節置換術、脊椎の手術、スポーツ外傷の治療などが含まれます。
- 形成外科:
- 体の表面に現れる「形」や「機能」の異常を、外科手術で修正・再建します。
- 生まれつきの異常(口唇口蓋裂など)、ケガによる傷跡や変形、皮膚腫瘍の切除と再建、乳房再建などが主な対象です。
- 呼吸器外科:
- 肺、気管、気管支、胸膜、縦隔(じゅうかく)などの胸部の病気を扱います。
- 肺がん、気胸(ききょう)、肺の良性腫瘍などが主な対象です。
- 泌尿器科:
- 腎臓、尿管、膀胱、尿道など尿路系の臓器と、男性生殖器の病気を扱います。
- 腎臓がん、膀胱がん、前立腺肥大症、尿路結石、性機能障害などが含まれます。
- 眼科:
- 目とその付属器の病気や異常を扱います。
- 白内障、緑内障、網膜剥離(もうまくはくり)、眼瞼(まぶた)の手術などが含まれます。
- 耳鼻咽喉科・頭頸部外科:
- 耳、鼻、喉(のど)、頭頸部(首から上の顔面を除く部分)の病気を扱います。
- 扁桃腺手術、副鼻腔炎の手術、甲状腺や唾液腺の腫瘍切除、聴力改善のための手術などが含まれます。
外科的治療の重要性
外科は、薬だけでは治せない病気や、緊急性の高い病態に対して、患者さんの命を救い、生活の質(QOL)を大きく改善する上で不可欠な役割を担っています。病気の原因を根本から取り除いたり、損傷した部位を修復したりすることで、患者さんが元の生活に戻れるようにサポートします。
体に異常を感じたり、手術が必要だと診断された場合は、それぞれの専門分野の外科医に相談することが大切です。