子どもの骨は成長途上にあるため、大人とは異なる特性を持っており、それが骨折の種類にも現れます。
大人のように完全に骨が折れるだけでなく、しなったり、一部が欠けたりする独特の骨折が多く見られます。
子どもに発生しやすい骨折の種類
1.若木骨折(不全骨折)
子どもの骨に特徴的な骨折で、大人にはほとんど見られません。
- 特徴: 骨の一部が完全に折れず、まるで若い木の枝が折れるように、片側だけがヒビが入ったように折れるのが特徴です。
- 発生メカニズム: 子どもの骨は大人よりも柔軟性があるため、強い衝撃を受けてもしなることができ、完全に折れきらずに残ることがあります。
- 症状: 痛みや腫れはあるものの、完全に骨折している場合に比べて、見た目の変形が少なく、動かせてしまうこともあります。そのため、親が見過ごしてしまい、「ただの打ち身だろう」と思ってしまうケースがあるので注意が必要です。
- 注意点: 放置すると、骨が変形したままくっついたり、治癒が遅れたりする可能性があります。
2.骨端線損傷(骨端線骨折)
子どもの骨折で最も注意が必要な種類の一つです。
- 特徴: 骨が縦に伸びる成長部分である「骨端線(成長軟骨板)」が損傷する骨折です。この部分は周囲の骨に比べて強度が非常に弱く、外力に対して脆弱です。
- 発生メカニズム: 転倒やスポーツ中の衝撃など、大人なら靭帯損傷(捻挫)で済むような力でも、子どもでは骨端線に負担がかかり損傷することがあります。
- 症状: 痛みや腫れ、可動域制限など、他の骨折と同様の症状が見られますが、X線(レントゲン)では軟骨部分が写りにくいため、診断が難しい場合もあります。
- 注意点: 骨端線損傷を放置したり、不適切な治療を受けたりすると、骨の成長を阻害し、将来的に手足の長さが左右で異なったり、関節が変形したりするなど、重い後遺症につながる可能性があります。疑われる場合は、必ず整形外科、特に小児整形外科の専門医の診察を受ける必要があります。
3.竹節状骨折(圧迫骨折)
主に長い骨(腕や脚の骨)の骨幹端(骨の端に近い部分)に発生する骨折です。
- 特徴: 骨が縦方向に圧縮されるような力が加わることで、竹の節のように骨が膨らんだり、潰れたりする骨折です。完全には折れていません。
- 発生メカニズム: 転倒して手をついた際など、骨の長軸方向に圧力がかかった場合に起こりやすいです。
- 症状: 比較的軽度な痛みや腫れであることが多く、こちらも見た目の変形は少ない傾向があります。
4.彎曲(わんきょく)骨折
骨折とは異なり、骨が完全に折れずに曲がってしまう状態を指します。
- 特徴: 骨がしなって、曲がったまま戻らなくなるような状態です。
- 発生メカニズム: 子どもの骨の柔軟性ゆえに起こります。特に前腕の骨(橈骨や尺骨)に見られます。
- 症状: 痛みや腫れはありますが、やはり完全骨折に比べて軽いことがあります。
- 注意点: 放置すると曲がったまま治癒し、腕の機能に影響が出る可能性があるため、整復(元の形に戻すこと)が必要です。
5.裂離骨折(剥離骨折)
靭帯や腱が骨に付着している部分で、骨の一部が引き剥がされるように折れる骨折です。
- 特徴: 靭帯や腱が骨よりも丈夫な場合に、強い牽引力が加わることで骨の一部が剥がれてしまうものです。
- 発生メカニズム: 足首の捻挫など、関節に強い力が加わり、靭帯が骨を引っ張ることで起こりやすいです。
- 症状: 痛み、腫れ、可動域制限など、捻挫の症状と非常によく似ているため、X線検査なしでは鑑別が難しいことがあります。
- 注意点: 捻挫だと思って放置してしまうと、骨が適切に癒合せず、痛みが残ったり、関節の不安定性が続いたりする可能性があります。
まとめ
子どもの骨折は、大人のそれとは異なる特徴を持つため、「見た目が大丈夫そうだから」「少し痛いだけだから」と自己判断せず、必ず医療機関(整形外科)を受診することが極めて重要です。特に、骨端線損傷は将来の成長に影響を及ぼす可能性があるため、早期の正確な診断と適切な治療が不可欠です。