足の甲をひねった|足の甲の捻挫

各部位ごとに起こりやすい怪我について

足の甲の捻挫は、足首の捻挫に比べてあまり知られていませんが、日常生活やスポーツで発生することのある怪我です。

足の甲は多くの小さな骨と靭帯が複雑に組み合わさっているため、正しい理解と適切な初期対応が非常に重要になります。

足の甲の捻挫について

どんな怪我なのか?

足の甲の捻挫とは、足首からつま先にかけての足の背側部分にある関節が、不自然なひねりや強い衝撃によって、靭帯や関節包(関節を包む膜)が損傷する状態を指します。

  • 足の甲の構造: 足の甲には、以下のような骨や関節が複雑に配置されています。
    • 足根骨(そくこんこつ): 距骨(きょこつ)、踵骨(しょうこつ)、舟状骨(しゅうじょうこつ)、立方骨(りっぽうこつ)、楔状骨(けつじょうこつ:内側、中間、外側の3つ)といった7つの骨の集まりです。
    • 中足骨(ちゅうそくこつ): 足の甲を構成する5本の長い骨で、つま先につながります。
    • 関節: これらの骨の間には、多くの小さな関節が存在し、それぞれが靭帯で強固に連結されています。特に、ショパール関節(横足根関節:踵骨・距骨と舟状骨・立方骨の間)やリスフラン関節(足根中足関節:足根骨と中足骨の間)などが足の甲の重要な関節であり、捻挫の好発部位となります。

 

負傷箇所一覧

足の甲の捻挫では、主に以下の部位の靭帯や関節包が損傷します。

  • 足根骨間靭帯: 足根骨同士をつなぐ多数の小さな靭帯。特に、過度な背屈(甲を反らす)や底屈(つま先を下げる)の強制、または回旋力が加わった際に損傷しやすいです。
  • 足根中足靭帯(リスフラン靭帯など): 足根骨と中足骨をつなぐ靭帯。リスフラン関節の安定性に重要で、この靭帯が損傷すると、足の甲の中央部や前方に強い痛みが生じ、体重をかけるのが困難になります。
  • 底側(足の裏側)の靭帯や関節包: 足の甲を強く反らす力が加わった際、甲側の靭帯が引き伸ばされるだけでなく、足の裏側にある靭帯や関節包が過度に圧迫されたり、損傷したりすることもあります。

 

どんな症状なのか?

足の甲の捻挫の症状は、損傷の程度によって異なります。

  • 痛み:
    • 捻挫した部位の関節を動かすときや、体重をかけたときに強い痛みが生じます。
    • 特に、足の甲を反らす(背屈)動作や、ひねる動作で痛みが増悪することが多いです。
    • 特定の靭帯の損傷であれば、その靭帯を触ると強い圧痛(押すと痛む)があります。
  • 腫れ(はれ):
    • 損傷部位の周囲が腫れて膨らみ、熱を帯びることがあります。関節全体が腫れて、足の甲の骨の隆起が分かりにくくなることもあります。
  • 内出血:
    • 血管が損傷すると、皮下に出血して青紫色に変色することがあります。腫れが引いた後に、広範囲に変色が見られることもあります。
  • 可動域制限:
    • 痛みや腫れのため、足首や足の指を十分に動かせなくなることがあります。特に足首の背屈(甲を反らす)や、足の指を反らす動きが制限されやすいです。
  • 歩行困難:
    • 痛みが強いため、体重をかけることができず、歩行が困難になったり、足を引きずるような歩き方になったりすることがあります。

 

どんな点に気をつけるべきなのか?

足の甲の怪我は、安易に自己判断せず、以下の点に注意が必要です。

  • 骨折の可能性を疑う: 足の甲には小さな骨が多く、捻挫だと思っていても実は骨折(疲労骨折、剥離骨折、リスフラン関節骨折など)していることがあります。特に、怪我の直後から強い痛みがあり、体重をかけることができない場合や、特定の骨を押すと激痛が走る場合は、骨折の可能性が高いです。
    • 子供の場合: 成長軟骨である骨端線が損傷(骨折)している可能性も考慮する必要があるため、特に注意が必要です。
  • 痛みの慢性化:
    • 適切な初期対応や治療が行われないと、痛みが長引いたり、関節の不安定性が残ったりして、慢性的な痛みや機能障害につながることがあります。
  • 足底の痛みとの関連:
    • 足の甲の損傷が、足の裏の痛み(足底筋膜炎など)を引き起こすこともあります。足の甲の痛みが慢性化すると、歩行時の重心移動が不自然になり、他の部位に負担がかかる可能性があるからです。
  • 運動継続の危険性:
    • 痛みを我慢して運動を続けると、損傷が悪化し、治癒がさらに長引いたり、手術が必要になったりするリスクが高まります。

 

応急処置:RICE処置を正しく行う

足の甲の捻挫や打撲をした際の基本的な応急処置は、スポーツ外傷の基本である「RICE(ライス)処置」です。怪我をした直後から可能な限り早く行うことで、炎症や腫れを最小限に抑え、回復を早めることができます。

  • Rest(安静):
    • 患部を動かさず、安静を保ちます。足の甲の場合、体重をかけないようにすることが最も重要です。可能な限り、患部に負担がかかる動きを避けましょう。
  • Icing(冷却):
    • ビニール袋に氷と少量の水を入れ、それをタオルなどでくるんで患部に当てて冷やします。直接氷を当てると凍傷になる可能性があるため注意が必要です。
    • 15~20分程度冷やし、一度外して休憩し、腫れや痛みが続く場合は繰り返します。炎症と腫れを抑え、痛みを軽減する効果があります。
  • Compression(圧迫):
    • 弾性包帯やテーピングを用いて、患部を軽く圧迫します。これは、内出血や腫れが広がるのを防ぐ目的で行います。
    • きつく締めすぎると血流障害を起こす可能性があるため、しびれや冷感がないか注意し、適度な強さで圧迫してください。足の甲全体を包み込むように巻くのが効果的です。
  • Elevation(挙上):
    • 患部を心臓より高い位置に上げます。座っているときや寝ているときに、足の下にクッションや枕などを置いて高くします。
    • 重力によって血液が患部に集まるのを防ぎ、腫れを軽減する効果があります。

RICE処置はあくまで応急的な処置です。症状が出ている場合は、ご相談ください。