寝違えで後頭部が痛くなることは十分にあります。
寝違えの主な原因は首や肩周りの筋肉の過緊張や炎症ですが、首の筋肉と頭部の筋肉は密接につながっているため、痛みが後頭部にまで広がることは珍しくありません。
寝違えで後頭部が痛くなることはありますか?
後頭部の痛みに繋がる主な筋肉とメカニズム
後頭部の痛みに特に関連が深い筋肉は以下の通りです。
- 後頭下筋群(こうとうかきんぐん): 首の付け根、後頭部のすぐ下にある小さな筋肉の集まりです。頭の微妙な動きを調整する重要な役割を担っています。寝違えによってこれらの筋肉が過度に緊張したり、炎症を起こしたりすると、後頭部にズキズキとした痛みや重だるさを感じることがあります。
- 僧帽筋(そうぼうきん): 首の後ろから肩、背中にかけて広がる大きな筋肉の上部線維は、後頭部の骨にも付着しています。この筋肉が寝違えで緊張すると、その付着部である後頭部に痛みを感じることがあります。
- 板状筋(ばんじょうきん、頭板状筋、頚板状筋): 首の後ろから後頭部にかけて走る筋肉で、頭を後ろに反らしたり、首を回したりする際に使われます。これらの筋肉の炎症や緊張も、後頭部の痛みの原因となります。
- 胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん): 首の側面にある筋肉ですが、後頭部にも一部が繋がっています。この筋肉の緊張も、関連痛として後頭部に痛みを引き起こすことがあります。
これらの筋肉が寝違えによって過度に緊張したり、炎症を起こしたりすると、以下のようなメカニズムで後頭部に痛みが現れます。
- 関連痛(放散痛): 首の筋肉のトリガーポイント(痛みの引き金となるしこり)や炎症が、その筋肉が付着する後頭部に痛みを飛ばすことがあります。これは、実際に後頭部に問題がなくても、首からの刺激が痛みとして認識される現象です。
- 血行不良: 筋肉の過緊張により、その周辺の血流が悪くなります。特に後頭部の筋肉群はデリケートであり、血行不良が痛みを悪化させる要因となります。
- 神経の圧迫: 首の筋肉の強い緊張が、後頭部に走る神経(大後頭神経など)を圧迫し、神経痛のような鋭い痛みやしびれを引き起こすこともあります。
後頭部の痛みで他に気をつけてほしい病気
寝違えによる後頭部の痛みは、通常、首の痛みが改善するにつれて和らいでいくことが多いです。
しかし、痛みが非常に強い場合、しびれを伴う場合、あるいは数日経っても改善しない場合は、単なる寝違えではない他の原因が潜んでいる可能性も考慮し、医療機関を受診することをおすすめします。
後頭部の痛みを引き起こす可能性のある他の疾患
- 緊張型頭痛: 後頭部から首、肩にかけての筋肉の緊張が主な原因となる頭痛です。「締め付けられるような痛み」や「重い感じ」が特徴で、寝違えと症状が似ているため、区別が難しいことがあります。ストレスや姿勢の悪さも原因となります。
- 頚椎症・頚椎椎間板ヘルニア: 首の骨(頚椎)の変形や椎間板の突出が、首の神経(特に後頭部に繋がる神経)を圧迫することで、首の痛みと共に後頭部に放散痛やしびれを引き起こすことがあります。
- 後頭神経痛: 首の後ろから頭部にかけて走る後頭神経が圧迫されたり刺激されたりすることで生じる神経痛です。ピリピリ、チクチク、ズキズキとした鋭い痛みや電気が走るような痛みが特徴で、後頭部の片側に出ることが多いです。
- 片頭痛: ズキンズキンと脈打つような痛みが特徴の頭痛ですが、後頭部や首筋から痛みが始まることもあります。吐き気や光・音過敏を伴うことが多いです。
- くも膜下出血・脳腫瘍などの脳の病気: 稀ではありますが、突然の激しい頭痛(「バットで殴られたような」と表現されることも)や、吐き気、意識障害などを伴う場合は、緊急性の高い脳の病気が隠れている可能性があります。
- 顎関節症: 顎関節の不調が、関連痛として首や後頭部に痛みを引き起こすことがあります。口を開けにくい、顎の音がするといった症状を伴います。
受診の目安
以下のような症状がある場合は、早めに医療機関(整形外科、脳神経外科、頭痛外来など)を受診してください。
- 痛みが非常に強い、または増していく
- 数日経っても改善しない
- 首だけでなく、腕や手にもしびれや麻痺がある
- 発熱、めまい、吐き気、視覚異常などの他の症状を伴う
- 意識が朦朧とする、ろれつが回らないなど、緊急性の高い症状がある
寝違えの痛みだと思っていても、自己判断せずに専門医の診察を受けることが、早期回復と他の重篤な病気の早期発見に繋がります。