胸や背中の怪我と間違われやすい「帯状疱疹」

間違えて接骨院に来院されやすい病気・怪我

胸や背中の怪我と間違えて来院される病気の中に「帯状疱疹(たいじょうほうしん)」があります。

急にズキズキし始めたんですけど」「気づいたらピリピリなったんだけど、何か痛めたかな?」とおっしゃりながら来院されるケースが多いです。

帯状疱疹の初期の段階、赤くなったりカサブタができる前の段階で、間違えて接骨院に来院されるケースがほとんどです。

ここでは、皮膚に症状が発生する病気の一種、帯状疱疹について基本的な情報をまとめておきます。

帯状疱疹について

帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ウイルスによって引き起こされる病気です。このウイルスは、子どもの頃にかかる水ぼうそう(水痘)の原因ウイルスと同じものです。水ぼうそうが治った後もウイルスは体内の神経節に潜伏しており、免疫力が低下した際に再び活性化して発症します。

 

帯状疱疹の主な症状

帯状疱疹の症状は、特徴的な経過をたどります。

  • 初期症状(前駆症状):

    多くの場合、まず体の左右どちらか片側の神経に沿って、ピリピリ、チクチク、ズキズキとした神経痛のような痛みや、かゆみ、違和感が生じます。この段階ではまだ発疹は現れません。痛みは軽度なものから、夜も眠れないほど強いものまで様々です。

  • 発疹と水ぶくれ:

    痛みが始まってから数日〜1週間ほどで、痛みのある部位に一致して赤い発疹が現れます。この発疹は次第に盛り上がり、やがて水ぶくれになります。水ぶくれは通常、体の片側に帯状に広がり、これが「帯状疱疹」という名前の由来となっています。

  • かさぶた:

    水ぶくれは徐々に破れてただれ、最終的にかさぶたになります。かさぶたが剥がれ落ちると、色素沈着が残ることがありますが、通常は数週間から数ヶ月で消えていきます。

  • その他:

    発熱、倦怠感、リンパ節の腫れなどの全身症状を伴うこともあります。

 

帯状疱疹が発症しやすい人・部位

  • 発症しやすい人:

    加齢、ストレス、過労、病気(がん、糖尿病など)、手術、免疫抑制剤の使用などにより、免疫力が低下している人に発症しやすいです。特に、50歳以上で発症リスクが高まります。

  • 発症しやすい部位:

    体幹(胸や背中)、顔面(おでこや目、耳の周り)、首、腕、足など、神経が通っている場所であればどこにでも発症する可能性があります。特に、胸から背中にかけて発症することが最も多いとされています。顔面に発症すると、目や耳に影響を及ぼすことがあり、視力障害や難聴、顔面神経麻痺などの合併症に繋がることもあるため、注意が必要です。

 

合併症

帯状疱疹の最もやっかいな合併症は、帯状疱疹後神経痛(PHN)です。

  • 帯状疱疹後神経痛(PHN):

    発疹が治った後も、痛みが数ヶ月から数年以上続くことがあります。これは、ウイルスによって神経が損傷されたために起こる神経痛で、特に高齢者で発症しやすい傾向があります。痛みが非常に強く、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。

  • その他の合併症:

    顔面神経麻痺、視力障害、難聴、膀胱直腸障害(排尿・排便困難)などが挙げられます。

 

治療

帯状疱疹の治療は、主に抗ウイルス薬の内服が中心となります。

  • 抗ウイルス薬:

    ウイルスの増殖を抑えることで、発疹の広がりや痛みの軽減、治癒期間の短縮、そして帯状疱疹後神経痛への移行を防ぐ効果が期待できます。発症後できるだけ早く(72時間以内が目安)服用を開始することが重要です。

  • 痛み止め:

    痛みが強い場合は、鎮痛剤(非ステロイド性消炎鎮痛薬、神経障害性疼痛に効く薬など)が処方されます。

 

予防

帯状疱疹は、ワクチンで予防することができます。

  • 帯状疱疹ワクチン:

    50歳以上を対象としたワクチンがあり、帯状疱疹の発症を予防したり、発症しても症状を軽くしたり、帯状疱疹後神経痛への移行リスクを減らしたりする効果が期待できます。ワクチンの種類や費用については、医療機関に相談しましょう。

帯状疱疹の症状は特徴的ですが、初期の痛みだけで発疹がない場合は診断が難しいこともあります。もし「ピリピリする痛み」や「体の片側に出る発疹」に気づいたら、早めに皮膚科を受診することが大切です。