交通事故による痛みは、事故直後から出ることもあれば、数日後、あるいは2週間以上経ってから遅れて現れることも珍しくありません。
事故の衝撃による体の反応や、痛みの感じ方のメカニズムが関係しているため、注意が必要です。
交通事故の痛みは、何日後から出る?2週間後でも出る?
なぜ痛みが遅れて現れるのか?
交通事故の直後は痛みがなくても、後から症状が出る主な理由は以下の通りです。
- 事故時の興奮とアドレナリン: 事故に遭うと、私たちの体は危機的状況に対応するため、大量のアドレナリンなどのストレスホルモンを分泌します。これには、一時的に痛みの感覚を麻痺させる作用があります。そのため、事故直後は体が興奮状態にあり、怪我をしていても痛みを感じにくいことがあります。興奮が冷め、アドレナリンの作用が薄れるにつれて、損傷部位の痛みを感じ始めることがあります。
- 筋肉の防御性収縮(こわばり): 事故の衝撃から身を守ろうとして、体が無意識のうちに筋肉を強くこわばらせることがあります。特に首や腰は、衝撃を吸収しようとして大きく負荷がかかります。この筋肉のこわばりが、事故直後の痛みを覆い隠していることがあります。数日経って筋肉の緊張が解けたり、炎症が本格化したりすることで、痛みやだるさとして自覚されるようになります。
- 炎症反応の遅延: 組織が損傷を受けると、修復のために炎症反応が起こります。しかし、この炎症反応は、損傷直後から最大になるわけではありません。多くの場合、24〜72時間(1〜3日)程度でピークに達します。この炎症による腫れや熱感、痛みが、遅れて現れる症状の主な原因となります。
- 神経症状の出現: 事故の衝撃で神経が圧迫されたり、微細な損傷を受けたりした場合、すぐに症状が出ず、数日〜数週間経ってからしびれや麻痺、放散痛(関連痛)として現れることがあります。特に、神経が炎症を起こすことで徐々に症状が悪化するケースも見られます。
- 日常動作による誘発: 事故直後は安静にしていたとしても、数日経って通常の生活に戻り、体を動かし始めることで、損傷していた部位に負荷がかかり、痛みが顕在化することがあります。例えば、寝違えのような症状で首が痛くなったり、重いものを持った時に腰に激痛が走ったりするケースです。
2週間後でも痛みが出る可能性
はい、2週間後やそれ以降に痛みが現れる可能性も十分にあります。 特に以下のようなケースでは、症状の出現が遅れることがあります。
- むちうち症(頸椎捻挫): 交通事故で最も多い怪我の一つですが、多くの場合、事故直後よりも翌日〜数日後、または1週間以上経ってから首や肩の痛み、頭痛、めまい、吐き気、手足のしびれなどの症状が現れます。これは、衝撃による頸椎周辺の靭帯や筋肉の損傷、神経への影響が時間差で表面化するためです。中には、事故から数週間経ってから本格的な症状に悩まされるケースもあります。
- 軽微な損傷の見落とし: 事故直後には自覚症状がなかった軽微な筋肉や靭帯の損傷が、日常生活を送る中で徐々に悪化したり、他の部位への負担が増えたりすることで、遅れて痛みとして現れることがあります。
交通事故後の対応で重要なこと
痛みが遅れて出る可能性があるため、交通事故に遭った場合は、以下を心がけましょう。
- 必ず医療機関を受診する: 事故直後に痛みがなくても、必ず病院(整形外科)を受診し、医師の診察を受けてください。 外見からは分からない体の内部の損傷がないか確認してもらうことが重要です。診断書を作成してもらうことで、後から症状が出た場合でも、事故との因果関係を証明しやすくなります。
- 継続して症状を観察する: 診断を受けた後も、体調の変化に注意し、痛みやしびれ、違和感など、どんな些細なことでも記録しておくと良いでしょう。
- 自己判断しない: 「たいしたことない」と自己判断せず、少しでも異変を感じたら、再度医療機関を受診しましょう。早期の治療開始が、症状の悪化を防ぎ、スムーズな回復につながります。
交通事故による痛みは時間差で現れることがあるため、油断せずに早期に医療機関を受診し、継続的に体の状態を観察することが、自身の健康と補償のためにも非常に重要です。