ふくらはぎの肉離れは、スポーツ活動中によく発生する怪我で、急なダッシュ、ジャンプ、方向転換などでふくらはぎの筋肉が過度に伸ばされたり、急激に収縮したりすることで起こります。
その場にしゃがみ込んでしまうほどの激痛を伴うこともあり、適切な初期対応がその後の回復に大きく影響します。
ふくらはぎを伸ばした・急に激痛が走った|ふくらはぎの肉離れ
どんな怪我なのか?
ふくらはぎの肉離れは、筋肉の一部または全体が断裂する状態を指します。正式名称は「筋挫傷(きんざしょう)」と言います。
- 筋肉の構造: ふくらはぎは主に2つの大きな筋肉で構成されています。
- 腓腹筋(ひふくきん): ふくらはぎの表層にある、アキレス腱につながる大きな筋肉で、速い動きやジャンプに関与します。内側頭と外側頭の2つの頭があります。
- ヒラメ筋: 腓腹筋の深層にある筋肉で、持久的な活動や姿勢の維持に関与します。
これらの筋肉は、急激な動きや疲労が蓄積した状態で過負荷がかかると、筋繊維が耐えきれずに損傷してしまいます。
負傷箇所一覧
ふくらはぎの肉離れで特に損傷しやすいのは以下の部位です。
- 腓腹筋の内側頭(ないそくとう):
- 最も肉離れが起こりやすい部位です。膝の裏側、ふくらはぎの少し内側寄りの上部に位置します。
- ダッシュやジャンプの際に、腓腹筋が急激に収縮する、または急に伸ばされることで、この部分に強い負荷がかかります。
- アキレス腱との移行部近くで発生することが多いです。
- 腓腹筋の外側頭(がいそくとう):
- 内側頭に次いで発生することがあります。ふくらはぎの少し外側寄りの上部に位置します。損傷のメカニズムは内側頭と同様です。
- アキレス腱との筋腱移行部(きんけんいこうぶ):
- 腓腹筋やヒラメ筋がアキレス腱に移行する部分も、力が集中しやすく、肉離れが発生しやすい部位です。
- ヒラメ筋:
- 腓腹筋に比べて深層にあるため肉離れは比較的少ないですが、ランニングなど持久的な活動で疲労が蓄積したり、強い衝撃を受けたりすると損傷することがあります。
どんな症状なのか?
肉離れの症状は、損傷の程度(軽度な筋繊維の伸びから、完全断裂まで)によって異なります。
- 激しい痛み:
- 怪我をした瞬間に「ブチッ」や「ポンッ」といった断裂音を感じたり、「棒で叩かれたような」突然の強い痛みを感じることが多いです。
- 痛みのために、その場に倒れ込んだり、動けなくなったりすることもあります。
- 圧痛(あっつう):
- 損傷部位を指で押すと、非常に強い痛みがあります。
- 腫れ(はれ)と内出血:
- 損傷した筋繊維や血管から出血し、患部が腫れ上がります。
- 時間とともに内出血が皮膚表面に現れ、青紫色に変色することがあります。これは、ふくらはぎ全体や、重度の場合には足首や足の指の方まで広がることもあります。
- 陥凹(かんおう):
- 筋肉が完全に断裂した場合、損傷部位にくぼみ(陥凹)が生じ、指で触れることができる場合があります。これは重度の肉離れのサインです。
- 機能障害:
- 痛みのために、つま先立ちができない、歩行が困難、足を引きずるなどの症状が出ます。
- 重度の場合、自力での歩行が不可能になることもあります。
どんな点に気をつけるべきなのか?
ふくらはぎの肉離れは、単なる筋肉痛とは異なり、適切な対処をしないと治癒が遅れたり、再発しやすくなったり、重篤な合併症を引き起こしたりする可能性があります。
- 「ただの筋肉痛」と自己判断しない:
- 急な痛みや断裂感があった場合は、筋肉痛とは異なる肉離れの可能性が高いです。無理に動かすことは避けましょう。
- 安静の徹底:
- 痛みを我慢して動いたり、運動を続けたりすると、損傷が悪化し、治癒が大幅に遅れることになります。重度の場合は、再断裂のリスクも高まります。
- 再発しやすい怪我である:
- 肉離れは、一度発生すると再発しやすい怪我の一つです。不十分な回復や、再発予防のための施術を怠ると、繰り返してしまいます。
- 他の重篤な怪我との鑑別:
- アキレス腱断裂: ふくらはぎの肉離れと同様に「ポンッ」という音や激痛を伴うことがありますが、アキレス腱の完全断裂はより重症です。踵を上げられない、つま先立ちが全くできない、断裂部に大きな陥凹があるなどの症状があれば、アキレス腱断裂の可能性が高いです。
- コンパートメント症候群: まれですが、内出血がひどく、ふくらはぎ内部の圧力が高まりすぎると、筋肉や神経が壊死するコンパートメント症候群を発症する可能性があります。強い腫れと激しい痛み、しびれ、足の指が動かせないなどの症状があれば、緊急性が高いです。
応急処置:RICE処置を正しく行う
ふくらはぎの肉離れをした際の基本的な応急処置は、スポーツ外傷の基本である「RICE(ライス)処置」です。怪我をした直後から可能な限り早く行うことで、炎症や腫れを最小限に抑え、回復を早めることができます。
- Rest(安静):
- 患部を動かさず、安静を保ちます。最も重要です。痛みが激しい場合は、松葉杖などを使って体重をかけないようにしましょう。無理に動かすと、損傷が悪化したり、内出血が広がったりする可能性があります。
- Icing(冷却):
- ビニール袋に氷と少量の水を入れ、それをタオルなどでくるんで患部に当てて冷やします。直接氷を当てると凍傷になる可能性があるため注意が必要です。
- 15~20分程度冷やし、一度外して休憩し、腫れや痛みが続く場合は繰り返します。炎症を抑え、腫れや痛みを軽減する効果があります。
- Compression(圧迫):
- 弾性包帯やテーピングを用いて、患部を軽く圧迫します。これは、内出血や腫れが広がるのを防ぐ目的で行います。
- きつく締めすぎると血流障害を起こす可能性があるため、しびれや冷感がないか注意し、適度な強さで圧迫してください。ふくらはぎ全体を包み込むように巻くのが効果的です。
- Elevation(挙上):
- 患部を心臓より高い位置に上げます。座っているときや寝ているときに、足の下にクッションや枕などを置いて高くします。
- 重力によって血液が患部に集まるのを防ぎ、腫れを軽減する効果があります。
RICE処置はあくまで応急的な処置です。症状が出ている場合は、ご相談ください。