スケートボードで発生しやすい怪我・痛み

スポーツによる怪我・痛み

スケートボードは、ストリートやパークでのトリック、高速での滑走など、非常にダイナミックでアクロバティックな動きを伴うため、転倒や衝突による様々な外傷・怪我のリスクが高いスポーツです。特に、手首の骨折、頭部外傷、肩の脱臼は、スノーボードと同様に高頻度で重症化しやすい怪我として知られています。

また、初心者はもちろんのこと、熟練者でも予期せぬ転倒により怪我を負う可能性があります。

ここでは、スケートボードで発生しやすい外傷や怪我を、主な部位ごとにまとめて解説します。

※接骨院では施術困難な外傷・怪我も情報として、まとめさせていただきます。

スケートボードで発生しやすい外傷・怪我

手首の怪我(最も多い)

転倒時にバランスを崩し、反射的に手をつくことで手首に大きな衝撃が加わるため、最も高頻度で発生する怪我です。

  • 手首の骨折(特に橈骨遠位端骨折)
    • 症状: 手首の激しい痛み、腫れ、変形、動かせない
    • 原因: 転倒時に手をついた際に、手首に体重や運動エネルギーの全てが集中するため。特に手のひらを地面につく形で転倒することが多いです。
    • 対処: 骨折の可能性が高いため、直ちに整形外科を受診しましょう。ギプス固定や手術が必要となります。
    • 予防: リストガード(手首用プロテクター)の装着が最も有効です。また、安全な転び方を習得し、手をつくのではなく、背中や膝から着地する意識を持つことも大切です。
  • 手首の捻挫
    • 症状: 手首の痛み、腫れ、動かすと痛む。骨折ほどではないですが、日常生活にも支障が出ることがあります。
    • 原因: 骨折と同様に、転倒時に手をついた際に手首が不自然にひねられる。
    • 対処: RICE処置(安静、冷却、圧迫、挙上)が基本です。痛みが続く場合は医療機関を受診しましょう。

 

頭部・顔面の怪我(最も重篤化する可能性)

転倒や衝突の際に最も重篤な結果を招く可能性があります。アスファルトやコンクリートといった硬い路面で滑ることが多いため、衝撃が大きくなります。

  • 脳震盪(のうしんとう)
    • 症状: 一時的な意識喪失、意識混濁、めまい、吐き気、頭痛、記憶障害(受傷時の記憶がない)、集中力の低下など。
    • 原因: 転倒時に頭部を路面に強く打ち付ける、他のスケーターや物体との衝突。
    • 対処: 直ちに滑走を中止し、医療機関を受診することが必須です。症状が軽いと思われても、必ず医師の診断を受けましょう。繰り返しの脳震盪は、慢性的な脳障害につながる危険性があります。
    • 予防: ヘルメットの着用が最も重要です。転倒時に顎を引き、後頭部を打ち付けないような安全な転び方を身につけることも大切です。
  • 顔面骨骨折(鼻骨骨折、頬骨骨折など)・歯牙損傷・裂傷
    • 症状: 顔面の痛み、腫れ、変形、出血。歯のぐらつきや欠損。
    • 原因: 転倒や衝突時に顔面を打ち付ける。
    • 対処: 医療機関(整形外科、口腔外科、歯科など)を受診し、適切な治療を受けましょう。

 

肩の怪我

転倒時に肩から打ち付けたり、手をついた際の衝撃が肩に伝わったりすることで発生します。

  • 肩関節脱臼(けんかんせつだっきゅう)
    • 症状: 肩の激しい痛み、腕が動かせない、肩の変形(腕がだらりと下がり、肩にへこみが確認できる)。
    • 原因: 転倒時に肩から地面に強く打ち付ける、または手をついた際に腕が不自然な方向に引っ張られる。
    • 対処: 速やかに医療機関を受診し、整復する必要があります。一度脱臼すると再発しやすいため、適切なリハビリテーションや、場合によっては手術が検討されます。
    • 予防: ショルダープロテクターの装着や、安全な転び方の習得(手をつかない、肩から打ち付けない意識)が有効です。
  • 鎖骨骨折(さこつこっせつ)
    • 症状: 鎖骨部分の激しい痛み、腫れ、変形、腕を動かせない。
    • 原因: 肩から強く転倒した際に、その衝撃が鎖骨に集中する。
    • 対処: 骨折の可能性が高いため、直ちに整形外科を受診する。固定や手術が必要となることがあります。

 

膝の怪我

オーリーやフリップといったトリックの着地時、または転倒時に膝を打ち付けることで発生します。

  • 膝蓋腱炎(しつがいけんえん)/ ジャンパー膝
    • 症状: 膝のお皿のすぐ下(膝蓋腱部)の痛み。特にジャンプの着地時に痛みが強くなる。
    • 原因: オーリーやジャンプトリックの着地による膝蓋腱への過度な負担(オーバーユース)が原因です。
    • 対処: 安静が基本です。アイシング、ストレッチ、大腿四頭筋の強化、膝バンドの使用などが有効です。痛みが引かない場合は医療機関を受診しましょう。
  • 膝の打撲・擦り傷
    • 症状: 膝の痛み、腫れ、皮膚の擦過傷。
    • 原因: 転倒時に膝を路面に打ち付ける。
    • 対処: アイシング、清潔な状態での傷の保護。
    • 予防: ニーパッド(膝用プロテクター)の着用が非常に有効です。
  • 半月板損傷 / 靭帯損傷(前十字靭帯など)
    • 症状: 膝の痛み、引っかかり感、ロッキング現象(膝が曲がったまま伸びない)。不安定感。
    • 原因: 着地失敗による膝のねじれ、不適切なフォームでのトリック。
    • 対処: 整形外科を受診し、損傷の程度を診断してもらいましょう。保存療法で改善しない場合は手術が検討されます。

 

足首の怪我

着地失敗やバランスを崩した際に足首をひねることで発生します。

  • 足関節捻挫(そくかんせつねんざ)
    • 症状: 足首の痛み、腫れ、内出血。ひどい場合は体重をかけられない。
    • 原因: ジャンプの着地失敗、ボードから飛び降りる際に足首をひねる、バランスを崩して足首がグラつくなど。
    • 対処: RICE処置が基本です。医療機関を受診し、靭帯の損傷度合いを確認することが重要ですす。重度の場合、固定やリハビリテーションが必要となります。
  • 足首の骨折
    • 症状: 足首の激しい痛み、腫れ、変形。体重をかけることができない。
    • 原因: 高いところからの着地失敗や、高速での転倒で足首に大きな力が加わる。
    • 対処: 骨折の可能性が高いため、直ちに整形外科を受診しましょう。固定や手術が必要となります。

 

腰・お尻・股関節の怪我

転倒時に尾てい骨や腰部を強く打ち付けたり、トリックで腰をひねったりすることで発生します。

  • 尾骨骨折(びこつこっせつ)/打撲
    • 症状: 尾てい骨周辺の激しい痛み、座ると痛む、排便時に痛む。
    • 原因: 後方へ転倒し、お尻から路面に強く打ち付ける。
    • 対処: 安静、ドーナツクッションなどの使用で患部を圧迫しないようにする。痛みが続く場合は整形外科を受診しましょう。
    • 予防: ヒッププロテクター(お尻パッド)の装着が非常に有効です。
  • 腰椎捻挫/腰痛
    • 症状: 腰の重だるさ、張り、特定の動作での痛み。
    • 原因: 転倒時の衝撃、トリックの繰り返しによる腰への負担、体幹の筋力不足や柔軟性の低下。
    • 対処: 急性期は安静とアイシング。痛みが落ち着いたら温熱ケア、ストレッチ、体幹強化。痛みが続く場合は医療機関を受診しましょう。
  • 股関節痛 / 鼠径部痛
    • 症状: 股関節や太ももの付け根の痛み。特にボード上でのバランス維持や、トリック時に股関節を大きく動かすと痛む。
    • 原因: 股関節周囲の筋肉のオーバーユースや、柔軟性不足。
    • 対処: 安静、ストレッチ、股関節周囲の筋力強化。

 

その他の怪我

  • 擦り傷・打撲
    • 症状: 皮膚の表面の損傷、内出血、痛み。
    • 原因: 転倒時に路面や障害物に接触する。
    • 対処: 清潔にし、絆創膏などで保護。打撲はアイシング。
    • 予防: 長袖・長ズボンの着用、プロテクターの装着。
  • 脛の打撲(シャインガードの必要性)
    • 症状: すねの激しい痛み、腫れ、内出血。
    • 原因: トリック失敗時に、回転したボードがすねに強く当たる。
    • 対処: アイシング。痛みが続く場合は整形外科を受診。
    • 予防: シンガード(すね当て)の着用が有効です。

 

怪我の予防のために

スケートボードにおける怪我のリスクを減らすためには、以下の点に注意することが非常に重要です。

  • プロテクターの着用(必須!):
    • ヘルメット:頭部保護のため必ず着用しましょう。
    • リストガード(手首用プロテクター):手首の骨折予防に最も有効です。
    • ニーパッド(膝用プロテクター):膝の打撲や擦り傷、関節への衝撃を防ぎます。
    • エルボーパッド(肘用プロテクター):肘の打撲や擦り傷を防ぎます。
    • ヒッププロテクター(お尻パッド):尾骨や腰部の打撲・骨折予防に有効です。
    • シンガード(すね当て):ボードがすねに当たるのを防ぎます。
    • 初心者はもちろんのこと、熟練者でもプロテクターの着用を強く推奨します。
  • 十分なウォーミングアップとクールダウン:
    • 滑走前には全身をしっかり温め、特に手首、肩、膝、足首、腰、股関節などの関節と筋肉を動かす動的ストレッチを重点的に行いましょう。
    • 滑走後には使った筋肉の静的ストレッチを行い、クールダウンすることで疲労回復を促し、柔軟性を維持できます。
  • 正しい基礎技術と安全な転び方の習得:
    • まずは、ボードに乗る、降りる、プッシュする、曲がる、止まるといった基本的な動作を安定して行えるようになることが重要です。
    • 安全な転び方(手をつかない、背中やお尻で受け身を取る)を習得することで、重篤な怪我のリスクを減らせます。
  • レベルに合った場所とトリックの選択:
    • 最初は平らで広い安全な場所を選び、人や車通りのない場所で練習しましょう。
    • 自身の技術レベルに合ったトリックから挑戦し、無理のない範囲で徐々に難易度を上げていきましょう。
  • 筋力トレーニングと柔軟性の向上:
    • スケートボードに必要な体幹(腹筋、背筋)、下半身(大腿四頭筋、ハムストリングス、殿筋)、そして手首や肩周りの筋力をバランスよく鍛えることで、体の安定性が向上し、衝撃を吸収しやすくなります。
    • 全身の柔軟性を高めるストレッチを継続的に行いましょう。
  • 適切な用具の選択とメンテナンス:
    • 自身の体格や足のサイズに合ったボード、トラック、ウィール、ベアリング、シューズを選びましょう。
    • ボードのビスの緩みやウィールの状態など、定期的に用具の点検とメンテナンスを行いましょう。
  • 休息と栄養:
    • 過度な練習は疲労を蓄積させ、集中力や反応速度を低下させ、怪我のリスクを高めます。適度な休憩を設け、体の回復を促しましょう。
    • バランスの取れた食事と十分な水分補給も大切です。
  • 症状の早期発見と対処:
    • 痛みや違和感がある場合は無理せず滑走を中断し、必要であれば整形外科などの医療機関を速やかに受診しましょう。「少しの痛みだから」と我慢して続けることは、重症化を招く最大の要因です。