「嘔吐・吐き気」が出ていたら、すぐに「病院を受診」してください。

間違えて接骨院に来院されやすい病気・怪我
嘔吐や吐き気は、非常に多くの病気や状態で見られる一般的な症状です。

原因は消化器系の問題から脳の病気、全身の病気に至るまで多岐にわたります。

接骨院にも、怪我と間違えて病気の方が来院されるケースがあるのですが、嘔吐・吐き気が出ていたら、すぐに病院を受診してください。

一般的な怪我のレベル、日常生活で発生する怪我のレベルでは、嘔吐・吐き気が出ることはほとんどありませんので、接骨院ではなく、医療機関・病院をすぐに受診してください。

特に下記の「2. 脳・神経系の病気」の患者さんが、接骨院に間違えて来院されるケースが目立ちます。

以下に、嘔吐・吐き気を訴える主な病気や状態をまとめます。

吐き気は一般的な怪我では発生しにくい

1. 消化器系の病気

消化器系の問題は、嘔吐・吐き気の最も一般的な原因です。

  • 急性胃腸炎(感染性胃腸炎): ウイルス(ノロウイルス、ロタウイルスなど)や細菌(サルモネラ菌、O-157など)の感染によって起こります。吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、発熱などの症状がみられます。
  • 食中毒: 細菌が産生する毒素やウイルスによって汚染された食品を摂取することで起こります。症状は原因菌によって異なりますが、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢などが主です。
  • 胃潰瘍・十二指腸潰瘍: 胃や十二指腸の粘膜が深く傷つき、潰瘍ができる病気です。みぞおちの痛み、吐き気、げっぷ、食欲不振などがみられます。重症化すると吐血や黒色便が出ることもあります。
  • 逆流性食道炎: 胃酸が食道に逆流し、食道粘膜に炎症を起こす病気です。胸焼け、呑酸(酸っぱいものが上がってくる感覚)、吐き気などがみられます。
  • 機能性ディスペプシア: 胃の働きに異常があるにもかかわらず、内視鏡検査などで明らかな異常が見つからない場合に診断されます。胃もたれ、早期満腹感、みぞおちの痛み、吐き気などが症状として現れます。
  • 急性虫垂炎: いわゆる「盲腸」です。初期にはみぞおちやへその周りが痛み、吐き気を伴うことがあり、その後、痛みが右下腹部に移動するのが特徴です。
  • 腸閉塞(イレウス): 腸管が詰まり、内容物が流れなくなる状態です。激しい腹痛、吐き気、嘔吐、お腹の張り、排便・排ガスの停止などがみられます。過去に開腹手術を受けたことがある人に起こりやすいです。
  • 急性膵炎: 膵臓に炎症が起こる病気で、飲酒や胆石が原因となることが多いです。みぞおちから背中にかけての激しい痛み、吐き気、嘔吐が特徴的です。
  • 急性肝炎・胆嚢炎・胆石症: 肝臓や胆道の炎症、胆石によっても吐き気や嘔吐が起こることがあります。特に胆石発作では、右上腹部の激しい痛みと吐き気が脂っこい食事の後に現れることがあります。
  • 胃がん、食道がん、大腸がん: 進行すると、食べ物の通過障害や全身状態の悪化により吐き気・嘔吐が生じることがあります。

 

2. 脳・神経系の病気

嘔吐中枢が刺激されることで吐き気や嘔吐が起こる場合があります。

  • 片頭痛: 激しい頭痛とともに、吐き気や嘔吐、光や音に過敏になる症状を伴うことがあります。
  • くも膜下出血: 脳の血管が破裂し、くも膜の下に出血が起こる病気です。「これまで経験したことのないような激しい頭痛」とともに、突然の嘔吐を伴うことが多いです。
  • 脳梗塞・脳出血(特に小脳出血): 脳の血管が詰まったり破れたりすることで脳に障害が起きる病気です。手足の麻痺やしびれ、言葉の障害などとともに、吐き気・嘔吐が見られることがあります。特に小脳に病変がある場合は、めまいや嘔吐が強く出ることがあります。
  • 脳腫瘍: 脳腫瘍が大きくなると脳圧が上昇し、嘔吐中枢が刺激されて吐き気や嘔吐が起こることがあります。
  • 髄膜炎、脳炎: 脳や脊髄を覆う膜や脳自体に炎症が起こる病気で、発熱、頭痛とともに吐き気・嘔吐がみられます。
  • メニエール病、良性発作性頭位めまい症、前庭神経炎など(めまいを伴う病気): 内耳の異常によってめまいとともに吐き気や嘔吐が誘発されることがあります。

 

3. その他の全身疾患や特殊な状態

  • 糖尿病(糖尿病性ケトアシドーシス、高血糖・低血糖): 糖尿病がコントロール不良になると、高血糖によるケトアシドーシスや、低血糖発作によって吐き気・嘔吐が起こることがあります。
  • 急性心筋梗塞・狭心症: 胸の痛みや圧迫感とともに、吐き気や冷や汗、みぞおちの痛みなどが現れることがあります。特に心筋梗塞では、胸の痛みよりもみぞおちの痛みや吐き気が前面に出ることがあり、消化器の病気と間違われることがあります。
  • 腎不全(尿毒症): 腎臓の機能が低下すると、体内に老廃物が蓄積し、吐き気や嘔吐、食欲不振などの症状が出ることがあります。
  • 薬剤の副作用: 特定の薬剤(抗がん剤、抗生物質、鎮痛剤、ジギタリス製剤など)は、副作用として吐き気や嘔吐を引き起こすことがあります。
  • 妊娠(つわり・妊娠悪阻): 妊娠初期に多くの女性が経験する生理的な現象です。
  • 熱中症: 高温多湿な環境下での活動によって、めまい、頭痛、吐き気、嘔吐などの症状が出ることがあります。
  • 精神的な要因: ストレス、不安、パニック障害、うつ病などが原因で吐き気を感じることがあります。
  • 周期性嘔吐症候群(アセトン血性嘔吐症、自家中毒): 小児に多い病気ですが、成人でも見られます。原因不明の激しい嘔吐を繰り返す発作が起こり、発作がない期間は元気です。
  • 過度の飲酒: アルコールの分解産物が胃腸に刺激を与えたり、脳の嘔吐中枢を刺激したりして吐き気や嘔吐を引き起こします。

 

受診の目安

吐き気や嘔吐は一時的なものであることも多いですが、以下のような場合は速やかに医療機関を受診すべきです。

  • 激しい頭痛を伴う場合: 特に、今まで経験したことのないような突然の激しい頭痛。
  • 胸の痛みや息苦しさを伴う場合。
  • 意識障害や手足の麻痺・しびれを伴う場合。
  • 嘔吐物が血便やコーヒーのカスのような色をしている場合。
  • 腹痛がひどく、お腹が張っている場合や、排便・排ガスがない場合。
  • 高熱を伴う場合。
  • めまいがひどく、まっすぐに歩けない場合。
  • 水分が全く摂れず、脱水症状(尿が出ない、口が乾くなど)の兆候がある場合。
  • 乳幼児や高齢者で、嘔吐が続く場合。
  • 吐き気が24時間以上続く場合。

嘔吐や吐き気の原因を特定するためには、症状の他に、いつから症状が出たか、何をしたら悪化するか、他にどのような症状があるか(腹痛、発熱、下痢、頭痛、めまいなど)、持病の有無、服用中の薬など、詳細な情報が診断の助けとなります。自己判断せず、症状が続く場合は医療機関を受診しましょう。