腕相撲|アームレスリングで発生しやすい怪我・痛み

スポーツによる怪我・痛み
腕相撲やアームレスリングは、相手の腕を力でねじ伏せる競技であり、腕、肩、肘、手首といった上半身の関節や筋肉に極めて瞬間的かつ強大な負荷がかかります。
特に、骨折(上腕骨らせん骨折が最も特徴的)、腱の断裂、靭帯損傷など、重篤な外傷が発生しやすいことで知られています。
競技中の予期せぬ動きや無理な体勢、過度な力の入れ方は、深刻な怪我につながるリスクを高めます。

ここでは、腕相撲・アームレスリングで発生しやすい外傷や怪我を、主な部位ごとにまとめて解説します。

※接骨院では施術困難な外傷・怪我も情報として、まとめさせていただきます。

腕相撲・アームレスリングで発生しやすい怪我・痛み

腕の骨折(最も特徴的かつ重篤)

腕相撲・アームレスリングに特有の、非常に重篤な怪我です。

  • 上腕骨らせん骨折
    • 症状: 腕相撲中に「バキッ」「ゴキッ」という激しい音と同時に、上腕(肩から肘の間)に耐え難い痛みが生じ、腕が動かせなくなる。変形や腫れ、内出血を伴う。
    • 原因: 相手の腕を無理にねじ伏せようとしたり、逆に相手に腕を外側にねじられたりする際に、上腕骨にねじれの力が極度に集中することで発生します。特に、相手の力に抵抗し、肘を支点に腕を外側にひねられるような体勢になった時に起こりやすいです。体重をかけてしまう、肘が支点から離れる、腰を使って無理に引いてしまうなどの誤ったフォームもリスクを高めます。
    • 対処: 緊急性の高い怪我であり、直ちにプレーを中止し、腕を固定して速やかに整形外科を受診しましょう。多くの場合、手術が必要となり、回復には数ヶ月から半年以上かかることがあります。

 

肘の怪我

肘は腕相撲の支点となるため、非常に大きなストレスがかかる部位です。

  • 肘関節の内側側副靭帯損傷・断裂
    • 症状: 肘の内側の痛み、不安定感。肘を曲げ伸ばししたり、腕を内側にひねったりすると痛みが強くなる。
    • 原因: 腕相撲中に肘の内側に極度の引っ張りやねじれの力がかかることで発生します。特に、腕が外側にひねられるような動きになった際に、内側側副靭帯が過度に伸ばされることが原因です。
    • 対処: 整形外科を受診し、損傷の程度を診断してもらいましょう。重度の場合は手術が必要となることもあります。
  • 肘関節の剥離骨折 / 骨片遊離
    • 症状: 肘の激しい痛み、腫れ、可動域制限。
    • 原因: 腕相撲中に肘に急激な牽引力や圧縮力が骨にかかり、骨の一部が剥がれたり、軟骨や骨の欠片が関節内を移動したりする。
    • 対処: 直ちに医療機関を受診。手術が必要となることもあります。
  • 腱炎(上腕二頭筋腱炎など)
    • 症状: 肘の前方や上腕の付け根付近の痛み、特に力を入れたり動かしたりすると痛む。
    • 原因: 腕相撲の動作による上腕二頭筋腱への繰り返し負荷(オーバーユース)
    • 対処: 安静、アイシング、ストレッチ、筋力強化。

 

肩の怪我

腕を固定し、力を出すために肩関節にも大きな負担がかかります。

  • 腱板損傷(けんばんそんしょう)/ 腱板炎
    • 症状: 腕を上げたり、特定の方向に動かしたりすると痛む。特に腕相撲後に痛みが増し、夜間痛を伴うこともある。
    • 原因: 腕相撲中に肩関節に繰り返しによる過度な負荷(オーバーユース)や、瞬間的な強い衝撃。不適切なフォーム(肩をすくめる、肩を過度に使うなど)も原因となります。
    • 対処: 安静が重要です。アイシング、炎症を抑える薬の使用、そして肩甲骨の安定化やインナーマッスルの強化、フォームの修正を中心としたリハビリテーションが重要です。重度の損傷では手術が検討されることもあります。
  • 肩関節脱臼(けんかんせつだっきゅう)
    • 症状: 肩の激しい痛み、腕が動かせない、肩の変形
    • 原因: 相手の腕をねじ伏せようとした際に、肩関節が不自然にひねられたり、過度に外転・外旋されたりすることで発生します。
    • 対処: 速やかに医療機関を受診し、整復する必要があります。

 

手首の怪我

相手の腕をコントロールし、力を伝えるために手首にも極めて大きな負荷がかかります。

  • 手首の捻挫 / 靭帯損傷
    • 症状: 手首の痛み、腫れ、可動域制限。ひどい場合は手首に力を入れられない。
    • 原因: 腕相撲中に手首が不自然にひねられたり、極端な角度に曲がったりすることで、靭帯に損傷が生じる。
    • 対処: RICE処置が基本です。痛みが続く場合や、腫れがひどい場合は整形外科を受診し、靭帯の損傷度合いを確認することが重要です。
  • 腱鞘炎(けんしょうえん)
    • 症状: 手首を動かす際の痛み、腫れ、きしみ音。
    • 原因: 腕相撲における手首や指の繰り返しによる過度な負荷(オーバーユース)
    • 対処: 安静、アイシング、ストレッチ。痛みが引かない場合は医療機関を受診。

 

筋肉の怪我

極めて強い力を出すため、筋肉の損傷も発生しやすいです。

  • 肉離れ(特に上腕二頭筋、大胸筋、広背筋など)
    • 症状: 筋肉の特定の部位に突然の痛み、へこみや腫れ、内出血。力を入れると痛む。
    • 原因: 腕相撲中の筋肉の急激な収縮や過度な伸展、あるいは筋肉の疲労や柔軟性不足がある状態で極度の負荷がかかることで発生します。
    • 対処: RICE処置を速やかに行い、医療機関を受診しましょう。重度の場合は長期のリハビリテーションが必要となります。

 

怪我の予防のために

腕相撲・アームレスリングにおける怪我のリスクを減らすためには、以下の点が非常に重要です。

  • 正しいフォームと技術の習得(最も重要):
    • 専門の指導者から、身体に負担の少ない、安全で効率的な腕相撲のフォームと技術を学ぶことが何よりも重要です。
    • 体重をかけすぎない、肘を支点から離さない、腕だけで引っ張らない、腰や体幹を使いすぎないといった基本的な注意点を徹底しましょう。
    • 特に、相手に腕を外側にひねられるような危険な体勢になった場合、無理に抵抗せず、すぐに力を抜いて負けを受け入れる勇気を持つことが、上腕骨のらせん骨折を防ぐ上で最も大切です。
  • 十分なウォーミングアップとクールダウン:
    • 試合や練習前には全身をしっかり温め、特に肩、肘、手首、腕、背中といった腕相撲に関わる全ての関節と筋肉を動かす動的ストレッチを重点的に行いましょう。
    • クールダウンとして、使った筋肉の静的ストレッチを行い、疲労回復を促し、柔軟性を維持しましょう。
  • 筋力トレーニングと柔軟性の向上:
    • 腕相撲に必要な腕(上腕二頭筋、三頭筋、前腕筋群)、肩(三角筋、腱板)、背中(広背筋)、そして体幹の筋力をバランスよく鍛えましょう。特定の部位に負担が集中しないよう、全身のバランスを意識したトレーニングが重要です。
    • 全身の柔軟性、特に肩、肘、手首、脊柱の柔軟性を高めることで、関節の可動域が広がり、不自然な体勢での怪我のリスクを減らせます。
  • 段階的な練習量・強度の増加と休息:
    • 急激な練習量や負荷の増加は避け、段階的に力を試していきましょう。特に、初心者は軽い力から始め、徐々に強度を上げていくことが重要です。
    • オーバーユースによる慢性的な痛みを防ぐため、適切な休息日を設けることが重要です。疲労が蓄積している場合は、無理せず休養を取りましょう。
  • 審判の指示に従う:
    • アームレスリングの公式ルールでは、審判が選手のフォームや肘の位置を厳しくチェックし、危険な体勢になった場合はすぐに止めるなど、安全管理を徹底しています。必ず審判の指示に従い、勝敗よりも安全を優先しましょう。
  • 適切な場所と環境での実施:
    • 安定した専用の台やテーブルを使用し、滑りにくい場所で行いましょう。足元が不安定な場所での実施は、バランスを崩して怪我をするリスクを高めます。
  • 栄養と休息:
    • バランスの取れた食事で、筋肉や骨の回復に必要な栄養をしっかり摂りましょう。
    • 十分な睡眠を確保し、疲労回復と体の修復を促しましょう。
  • 症状の早期発見と対処:
    • 痛みや違和感がある場合は無理せず練習を中断し、必要であれば整形外科などの医療機関を速やかに受診しましょう。「少しの痛みだから」と我慢して続けることは、軽度な症状を重症化させる最大の要因ですし、深刻な障害につながる可能性もあります。