結論から言うと、接骨院(整骨院も同義)では、医師のように薬を処方したり、注射を打ったりすることはできません。
接骨院で施術を行うのは「柔道整復師」という国家資格者であり、その業務範囲は薬の処方を含まないためです。
接骨院では、薬は出せるの?
柔道整復師の業務範囲
柔道整復師は、骨折、脱臼、打撲、捻挫、挫傷(肉離れ)といった外傷性の負傷に対して、手術や薬を使用せず、徒手による整復、固定、後療法(物理療法、運動療法など)を行う専門家です。
- 非侵襲的治療が主:柔道整復師の資格は、メスを入れる外科手術や、体内に入れる薬の処方を許可していません。これは、医師法や薬剤師法といった別の法律で厳しく定められているからです。
- 痛み止めや湿布の処方はできない:したがって、接骨院で施術を受けた際に、痛み止め(内服薬)や塗り薬、医療用の湿布(処方箋が必要なもの)をその場で処方してもらうことはできません。市販されている湿布や軟膏を勧めることはあっても、それを「処方」することはできません。
なぜ薬の処方ができないのか
薬の処方には、薬の副作用、他の薬との飲み合わせ、患者さんのアレルギーや既往歴などを総合的に判断する高度な知識と責任が伴います。
- 医師法による規定:医師法により、医師のみが診察に基づいて薬を処方する権利を持っています。柔道整復師は医師ではないため、この権利がありません。
- 薬剤師法による規定:薬剤師法により、薬剤師は医師の処方箋に基づいて薬を調剤・交付する役割を担っています。
薬が必要な場合の対応
接骨院で施術を受けている際に、痛み止めや炎症を抑える薬が必要だと判断された場合は、柔道整復師は以下のような対応を取ることが一般的です。
当院でも、明らかに病的な患者さんが来院された場合は、受診を断り、整形外科等を勧めています。
- 医療機関(整形外科など)への受診を勧める:柔道整復師は、患者さんの症状を診て、薬が必要だと判断した場合、提携している医療機関や、患者さんがかかりつけの整形外科などを受診するように促します。そこで医師が診察し、必要に応じて薬を処方します。
- 診断書や紹介状の作成:場合によっては、患者さんの状態をよりスムーズに医師に伝えるために、接骨院から医療機関への紹介状や施術証明書を作成してくれることもあります。
医薬部外品に分類される湿布・シートは、販売されることがある
- 医薬部外品に分類される湿布・シート
- 温感・冷感シートや、肌に貼るタイプの化粧品、または医薬部外品に分類される湿布(薬効成分が医薬品ほどではないもの)であれば、販売が許可されています。これらは医薬品ではないため、薬機法の規制対象外となることが多いです。
- 多くの接骨院で販売されている湿布類は、この医薬部外品に該当するケースが多いです。
まとめ
接骨院は、急性期の外傷に対して徒手療法や物理療法を用いて回復をサポートする専門施設です。しかし、薬の処方は医師の専門領域であり、接骨院で薬を受け取ることはできません。もし施術中に薬が必要だと感じたり、柔道整復師から薬の必要性を指摘されたりした場合は、指示に従って速やかに医師の診察を受けるようにしましょう。