足首のくるぶし部分を打ち付ける打撲は、転倒時や物にぶつかった際などに比較的よく発生する怪我です。
捻挫とは異なり、直接的な外力によって組織が損傷するもので、見た目以上に骨折や他の深刻な損傷を併発している可能性があるため、注意が必要です。
外くるぶし・内くるぶしをぶつけた|足首の打撲
どんな怪我なのか?
足首のくるぶし(外くるぶし:外果、内くるぶし:内果)を打ち付ける打撲は、その部位に直接的な衝撃が加わることで、骨、その周囲の軟部組織(筋肉、腱、靭帯)、血管、神経、皮膚などが損傷する状態を指します。いわゆる「打ち身」と同様のメカニズムで起こります。
- くるぶしの解剖:
- 外くるぶし(外果): 下腿の骨である腓骨(ひこつ)の先端に位置します。
- 内くるぶし(内果): 下腿の骨である脛骨(けいこつ)の先端に位置します。
- これらのくるぶしは足首の安定性を保つ重要な骨の突起であり、周囲には多くの靭帯が付着しています。
負傷箇所一覧
くるぶしを打ち付けた打撲では、衝撃を受けた部位の以下の組織が損傷します。
- 皮膚と皮下組織:
- 表皮・真皮: 衝撃で皮膚表面が擦りむけたり(擦過傷)、深い傷になったりすることがあります。
- 皮下出血: 皮下の毛細血管が破れて出血し、青あざ(内出血)となります。腫れを伴うことも多いです。
- 骨:
- 腓骨外果(がいか)または脛骨内果(ないか)の打撲: くるぶしそのものが直接衝撃を受け、骨表面の骨膜が損傷したり、骨にひび(亀裂骨折)が入ったり、実際に骨折している可能性があります。くるぶしは骨が皮膚のすぐ下にあるため、打撲の衝撃が骨に伝わりやすい部位です。
- 剥離骨折: 特に強い打撲では、くるぶしに付着する靭帯が強く牽引され、靭帯の付着部にある骨片が引き剥がされる「剥離骨折」を併発することがあります。これは、捻挫と打撲の両方の要素を含む怪我ともいえます。
- 足根骨の骨折: くるぶしを強く打ち付けることで、隣接する足根骨(距骨、踵骨など)にも衝撃が伝わり、骨折を併発する可能性もゼロではありません。
- 靭帯:
- くるぶし周辺には多くの靭帯(例:外側靭帯、三角靭帯など)が付着しており、打撲の衝撃で靭帯が直接損傷を受ける(軽い捻挫の状態になる)ことがあります。特に、ぶつけた衝撃で足首が瞬間的にひねられた場合、打撲と捻挫が複合的に発生することがあります。
- 腱:
- くるぶしの周囲には、足首や足指を動かすための腱が走行しています(例:外くるぶし側には腓骨筋腱、内くるぶし側には後脛骨筋腱など)。打撲によりこれらの腱が直接損傷を受けたり、炎症を起こしたりすることがあります。
- 血管・神経:
- くるぶしの周辺は血管や神経が比較的表面近くを通っています。打撲によってこれらの血管が破れ、内出血がひどくなることがあります。また、神経が圧迫されたり損傷したりすると、しびれや感覚の異常が現れることがあります。
どんな症状なのか?
くるぶしの打撲の症状は、衝撃の強さや損傷部位によって様々ですが、一般的には以下の症状が見られます。
- 痛み:
- 衝撃を受けた直後から、打ち付けた部位に局所的な強い痛みが生じます。
- 患部を直接押したり、触ったりすると強い圧痛があります。
- 足首を動かすと痛みが響いたり、体重をかけると痛みが増したりすることがあります。
- 腫れ(はれ):
- 損傷部位の周囲が腫れて膨らみ、熱を帯びることがあります。くるぶし周辺がパンパンに腫れ、骨の輪郭が分かりにくくなることもあります。
- 内出血:
- 皮下の血管が破れることで、皮膚が青紫色に変色します。時間とともに色が変化し(青→緑→黄)、範囲が広がることもあります。
- 可動域制限:
- 痛みや腫れのため、足首の関節を十分に動かせなくなることがあります。特に、打撲したくるぶし側の方向への動きが制限されやすいです。
- 歩行困難:
- 痛みが強いため、体重をかけることができず、歩行が困難になったり、足を引きずるような歩き方になったりすることがあります。
- しびれ・感覚鈍麻:
- 神経が損傷したり圧迫されたりした場合は、打撲部位の周囲や、その神経が支配する領域にしびれや感覚の鈍さが現れることがあります。
どんな点に気をつけるべきなのか?
くるぶしの打撲は、単なる「打ち身」と自己判断せず、以下の点に注意が必要です。
- 骨折の可能性を強く疑う:
- くるぶしは骨が皮膚のすぐ下にあるため、打撲の衝撃が骨に伝わりやすく、骨折(ひび、剥離骨折など)を併発している可能性が非常に高いです。
- 特に以下の症状がある場合は、骨折を強く疑い、必ず医療機関を受診してください。
- 体重をかけられないほどの強い痛みがある
- 特定の場所(骨)を押すと激痛が走る
- 足の形が明らかに変形している
- 腫れが異常に大きい、または日に日に悪化する
- 内出血が広範囲に及ぶ
- 子供の場合:成長軟骨である骨端線が損傷(骨折)している可能性も高く、見逃すと成長に影響が出るため、特に注意が必要です。
- 神経損傷の可能性:
- しびれや感覚の異常がある場合は、神経が圧迫または損傷している可能性があります。放置すると後遺症につながることもあるため、注意が必要です。
- 血腫(けっしゅ)の形成:
- 打撲により皮下に大きな血腫が形成されることがあります。大きな血腫は、痛みが長引いたり、組織の回復を妨げたりすることがあります。
- 捻挫との鑑別:
- 打撲と同時に足首がひねられた場合、打撲と捻挫が複合的に発生している可能性があります。捻挫は靭帯損傷であり、治療法や固定期間が異なるため、正確な診断が必要です。
応急処置:RICE処置を正しく行う
くるぶしを打ち付けた際の基本的な応急処置は、スポーツ外傷の基本である「RICE(ライス)処置」です。怪我をした直後から可能な限り早く行うことで、炎症や腫れを最小限に抑え、回復を早めることができます。
- Rest(安静):
- 患部を動かさず、安静を保ちます。足首の場合、体重をかけないようにすることが最も重要です。無理に動かしたり、体重をかけたりすると、骨折を悪化させたり、内出血を広げたりする可能性があります。松葉杖などの使用も検討しましょう。
- Icing(冷却):
- ビニール袋に氷と少量の水を入れ、それをタオルなどでくるんで患部に当てて冷やします。直接氷を当てると凍傷になる可能性があるため注意が必要です。
- 15~20分程度冷やし、一度外して休憩し、腫れや痛みが続く場合は繰り返します。炎症と腫れを抑え、痛みを軽減する効果があります。
- Compression(圧迫):
- 弾性包帯やテーピングを用いて、患部を軽く圧迫します。これは、内出血や腫れが広がるのを防ぐ目的で行います。
- きつく締めすぎると血流障害を起こす可能性があるため、しびれや冷感がないか注意し、適度な強さで圧迫してください。くるぶしを含む足首全体を包み込むように巻くのが効果的です。
- Elevation(挙上):
- 患部を心臓より高い位置に上げます。座っているときや寝ているときに、足の下にクッションや枕などを置いて高くします。
- 重力によって血液が患部に集まるのを防ぎ、腫れを軽減する効果があります。
RICE処置はあくまで応急的な処置です。症状が出ている場合は、ご相談ください。