サッカーで発生しやすい怪我・痛み

スポーツによる怪我・痛み
サッカーは、走る、跳ぶ、急停止、方向転換、キック、そして相手選手との接触が頻繁に発生する、非常に激しいスポーツです。

これらの動作が繰り返されることや、不意な接触、着地の失敗などによって、様々な外傷や怪我が発生しやすい特性があります。

特に、下半身の怪我が圧倒的に多く、中でも膝や足首の靭帯損傷が重症化しやすい傾向にあります。

ここでは、サッカーで発生しやすい外傷や怪我を、主な部位ごとにまとめて解説します。

※接骨院では施術困難な外傷・怪我も情報として、まとめさせていただきます。

サッカーで発生しやすい外傷・怪我

1. 膝の怪我(最も重要)

サッカーの怪我の中でも特に重症化しやすく、選手生命にも関わる可能性のある部位です。急停止、方向転換、ジャンプの着地、相手との接触などで膝に大きな負担がかかります。

  • 前十字靭帯損傷(ぜんじゅうじじんたいそんしょう)
    • 症状: 受傷時に「ブチッ」という断裂音や感覚がある、膝の激しい痛みと腫れ、膝が不安定でガクガクする(膝くずれ)。
    • 原因: 急な方向転換、急停止、ジャンプの着地時などに膝が不自然にねじれたり、過度に伸びたりすることで発生します。相手との非接触で起こることが多いですが、接触によっても発生します。
    • 対処: 手術が必要となる場合がほとんどです。受傷後はRICE処置を行い、速やかに整形外科を受診しましょう。長期のリハビリテーションが必要です。
  • 内側側副靭帯損傷(ないそくそくふくじんたいそんしょう)
    • 症状: 膝の内側の痛みと腫れ、膝のぐらつき。前十字靭帯損傷よりは安定していることが多い。
    • 原因: 膝の外側からの強い衝撃(タックルなど)、または膝が内側にひねられることで発生します。
    • 対処: 軽度であれば保存療法(RICE処置、サポーターなどによる固定、リハビリテーション)で回復することが多いですが、痛みが続く場合は医療機関を受診しましょう。
  • 半月板損傷(はんげつばんそんしょう)
    • 症状: 膝の痛み、引っかかり感、ロッキング(膝が曲がったまま伸びない)、膝の腫れ。
    • 原因: ジャンプの着地や方向転換時に膝がねじれたり、膝関節に衝撃が加わったりすることで、膝のクッションである半月板が損傷します。
    • 対処: RICE処置後、整形外科を受診し、損傷の程度を診断してもらいます。保存療法で改善しない場合は手術が検討されます。
  • 膝蓋腱炎(しつがいけんえん)/ ジャンパー膝
    • 症状: 膝のお皿のすぐ下(膝蓋腱部)の痛み。特にキックやジャンプ、ダッシュ、着地時に痛みが強くなる。
    • 原因: ジャンプやキック動作の繰り返しによる膝蓋腱への過度な負担(オーバーユース)が原因です。
    • 対処: 安静が基本です。アイシング、ストレッチ、大腿四頭筋の強化、膝バンドの使用などが有効です。痛みが引かない場合は医療機関を受診しましょう。

 

2. 足首の怪我(最も高頻度)

サッカーで最も多く発生する怪我の一つです。

  • 足関節捻挫(そくかんせつねんざ)
    • 症状: 足首の痛み、腫れ、内出血。ひどい場合は体重をかけられない。
    • 原因: ランニング中に不整地で足首をひねる、ジャンプの着地時や急な方向転換時に足首を内側(内反捻挫が圧倒的に多い)にひねる、相手の足に乗ってしまう(接触型)など。
    • 対処: RICE処置(安静、冷却、圧迫、挙上)が基本です。医療機関を受診し、靭帯の損傷度合いを確認することが重要です。重度の場合、固定やリハビリテーション、まれに手術が必要となります。

 

3. 太もも・ふくらはぎの怪我

急激な加速や減速、キック動作で負担がかかります。

  • 肉離れ(筋挫傷)
    • 症状: 運動中に「ブチッ」「ピキッ」という感覚と共に、太ももの裏(ハムストリングス)やふくらはぎ(腓腹筋、ヒラメ筋)に突然の激痛。内出血や腫れを伴うこともあります。
    • 原因: ウォーミングアップ不足、筋肉の疲労、柔軟性の低下、急なダッシュやキック、ストップ動作など。特にハムストリングスはスプリント時に発生しやすいです。
    • 対処: RICE処置を速やかに行い、医療機関を受診しましょう。適切なリハビリテーションを行い、再発予防に努めることが非常に重要です。
  • 打撲(うちみ)
    • 症状: 患部の痛み、腫れ、内出血。
    • 原因: 相手選手との衝突、ボールが強く当たるなど。
    • 対処: アイシングと安静。痛みがひどい場合は医療機関を受診。

 

4. アキレス腱の怪我

  • アキレス腱炎/断裂
    • 症状: アキレス腱周辺の痛み、腫れ、運動時の違和感。断裂の場合は「後ろから蹴られたような」突然の強い衝撃と激痛、立つ・歩くことが困難。
    • 原因: 走る、跳ぶ、急停止の繰り返しによる炎症(オーバーユース)。急なダッシュやジャンプ、方向転換時に、アキレス腱に強い負荷がかかることで断裂が発生します。30代以降に多く見られます。
    • 対処: 炎症であれば安静とアイシング。断裂の場合は緊急性の高い怪我であり、速やかに整形外科を受診する必要があります。多くの場合、手術が必要です。

 

5. 股関節・太ももの付け根の怪我

キック動作や急な方向転換、股関節の柔軟性不足が原因となることがあります。

  • 鼠径部痛(そけいぶつう)/ グロインペイン症候群
    • 症状: 太ももの付け根(股関節の内側や前面)の痛み。特にキック動作や、股関節を広げる・ひねる動作で痛みが強くなる。
    • 原因: 股関節周囲の筋肉(内転筋、腸腰筋など)の炎症や、それらの使いすぎ(オーバーユース)。体幹の不安定さや、股関節の柔軟性不足も影響します。
    • 対処: 安静、アイシング、ストレッチ、股関節周囲の筋力強化。症状が改善しない場合は整形外科を受診し、詳細な診断と治療を受けましょう。

 

6. 頭部・顔面の怪我

ヘディングや相手選手との衝突で発生します。

  • 脳震盪(のうしんとう)
    • 症状: 一時的な意識喪失、意識混濁、めまい、吐き気、頭痛、記憶障害(受傷時の記憶がない)、集中力の低下など。
    • 原因: ヘディングでの衝撃、相手選手との頭部同士の衝突、転倒時に頭を打つ。
    • 対処: 直ちに競技を中止し、医療機関を受診することが必須です。症状が軽いと思われても、必ず医師の診断を受けましょう。繰り返しの脳震盪は、慢性的な脳障害につながる危険性があります。
  • 顔面骨骨折(鼻骨骨折、頬骨骨折など)・裂傷
    • 症状: 顔面の痛み、腫れ、変形、出血。
    • 原因: ヘディング時の衝突、相手の肘や足との接触。
    • 対処: 医療機関を受診し、適切な治療を受けましょう。

 

7. 腰の怪我

キック動作やジャンプの着地、急な方向転換などで腰に負担がかかります。

  • 腰椎分離症・すべり症
    • 症状: 腰の慢性的な痛み。特に体を反らせる動作や、特定のキック動作で痛みが強くなる。足へのしびれを伴うことも。
    • 原因: 成長期の選手に多く、腰の過度な反りや回旋を伴う動作の繰り返し(キック、ジャンプなど)が原因で、腰椎の一部に疲労骨折が生じる。
    • 対処: 安静が基本ですが、痛みが続く場合や神経症状を伴う場合は整形外科を受診し、MRIなどで詳細な診断を受けましょう。コルセットでの固定や体幹トレーニング、リハビリテーションが行われます。

 

怪我の予防のために

サッカーにおける怪我のリスクを減らすためには、以下の点に注意することが非常に重要です。

  • 十分なウォーミングアップとクールダウン: プレー前には全身をしっかり温め、関節の可動域を広げましょう。特に下半身(股関節、膝、足首)の動的ストレッチは入念に行いましょう。プレー後にはクールダウンで筋肉をケアし、疲労回復を促しましょう。
  • 筋力トレーニングと柔軟性の向上:
    • 特にハムストリングス、大腿四頭筋、殿筋(お尻の筋肉)など下半身の筋肉をバランスよく鍛えることで、急なダッシュやストップ、ジャンプ着地時の安定性が向上し、怪我のリスクを減らせます。
    • 体幹強化も非常に重要で、体のバランスを保ち、腰への負担を軽減します。
    • ストレッチを継続的に行い、股関節や膝関節、足首の柔軟性を高めましょう。
  • 正しいフォームの習得: キック、ランニング、急停止、方向転換、ジャンプ着地など、基本的な動作の正しいフォームを身につけることが、特定の部位への過度な負担を減らし、怪我の予防に繋がります。
  • 適切なシューズの選択: プレーするグラウンドの種類(天然芝、人工芝、土など)に合った、足にフィットするサッカーシューズを選びましょう。スパイクの長さや配置も重要です。
  • テーピングやサポーターの活用: 過去に怪我をしたことがある部位や、不安のある部位にはテーピングやサポーターで補強することも有効です。特に足首の捻挫を繰り返しやすい選手には重要です。
  • 休息と栄養: 過度な練習は疲労を蓄積させ、怪我のリスクを高めます。十分な休息とバランスの取れた食事で体を回復させましょう。
  • 症状の早期発見と対処: 痛みや違和感がある場合は無理せず練習を中断し、必要であれば整形外科などの医療機関を受診しましょう。早めの対応が重症化を防ぎます。
  • ルールとフェアプレーの遵守: 無謀なプレーやラフプレーは、自身だけでなく相手選手への怪我の原因となります。ルールを理解し、フェアプレーを心がけましょう。