子供が何度も捻挫を繰り返すのには、大人とは異なるいくつかの理由があります。
特に、関節の特性やバランス能力が低いこと、発達段階の未熟さが大きく関係しています。
子供が、何度も捻挫を繰り返すのはなぜ?
関節が柔らかい(靭帯が緩い)
子供の関節、特に靭帯は大人に比べて柔らかく、柔軟性が高い傾向があります。これは成長途上であることや、骨の成長に靭帯の強度が追いついていない場合があるためです。
- 過伸展しやすい: 関節の可動域が広すぎるため、通常の動きの範囲を超えて関節が伸びすぎてしまい、靭帯に負担がかかりやすくなります。例えば、足首をひねったときに、大人なら耐えられる程度の力でも、子供の柔らかい靭帯では容易に伸びたり、損傷したりすることがあります。
- 安定性の不足: 関節の柔軟性が高い一方で、それを支える靭帯の強度がまだ十分でないと、関節全体の安定性が低くなります。この不安定さが、些細な衝撃や不自然な体勢でも関節がぐらつき、捻挫に繋がりやすくなります。
バランス能力の欠如
子供は、大人に比べてバランスを保つ能力がまだ十分に発達していません。 バランス能力は、体の重心をコントロールし、転倒を防ぐために非常に重要です。
- 不安定な姿勢での動作: 片足立ちや、走っている最中の急な方向転換など、バランスが要求される動作において、体がぐらつきやすくなります。不安定な状態で無理に動こうとすることで、足首や膝などの関節に予期せぬ負荷がかかり、捻挫に繋がります。
- 平衡感覚の発達途上: 平衡感覚は、内耳からの情報や視覚、体性感覚(関節や筋肉からの情報)を統合して成り立っています。子供のうちはこれらの情報処理能力がまだ未熟であるため、バランスを崩しやすい傾向があります。
- 反射的な反応の遅れ: バランスを崩しそうになった際に、とっさに体勢を立て直したり、手をついたりといった反射的な回避行動が、大人に比べて遅れることがあります。これも転倒や捻挫のリスクを高める要因となります。
空間認知能力が低い(未発達)
子供は、自分の体の位置や周囲の状況を正確に把握する空間認知能力がまだ発達途中です。
「自分が今、どんな姿勢をしているのか」「どんな体勢で動いているのか」という能力のことです。
- 足元への注意不足: 遊びやスポーツに夢中になると、足元や周囲の障害物に対する注意が散漫になりがちです。段差につまずいたり、地面の凹凸に気づかなかったりして、バランスを崩しやすくなります。
- 危険予測能力の不足: 動きの予測や、危険を回避するための瞬間的な判断力が大人に比べて未熟です。例えば、ボールを追いかけている最中に、ぶつかる可能性のある障害物や他の選手との距離感を誤り、無理な体勢でバランスを崩すことがあります。
- 体の使い方が未熟: 自分の体がどのように動いているか、どのくらいの速度や力で動かせば良いかといった、ボディイメージや運動のコーディネーション能力が十分に確立されていません。このため、急な方向転換やジャンプの着地などで、関節に不適切な力がかかりやすく、捻挫のリスクが高まります。
その他の要因
上記の主要な理由に加えて、以下のような要因も子供の捻挫の繰り返しに関与することがあります。
- 筋力不足: 関節を安定させるための筋力が十分でないと、靭帯への負担が増加します。
- 疲労の蓄積: 遊びやスポーツのしすぎで体が疲れていると、集中力が低下し、反応も遅くなるため、怪我のリスクが高まります。
- 過去の怪我の不十分な治療: 以前の捻挫が完全に治癒していない場合、その関節が弱くなり、再発しやすくなります。
- 不適切な靴やスポーツ用具: サイズの合わない靴や、機能が不十分なスポーツ用具の使用も、捻挫の原因となることがあります。
子供の捻挫の繰り返しを防ぐためには、これらの特性を理解し、適切な運動指導や環境整備を行うことが重要です。