ぎっくり腰は非常に強い痛みを伴うため、救急車を呼びたくなる気持ちはよくわかります。
しかし、基本的には命に関わる状態ではないため、ほとんどのぎっくり腰で救急車を呼ぶ必要はありません。
救急車は、緊急性が高く、生命の危機が迫っている、または重篤な後遺症につながる可能性のある傷病者を搬送するためのものです。ぎっくり腰で救急車を呼ぶべきケースは、ごく限られています。
ただし、中には、救急車を呼ぶレベルのぎっくり腰も存在します。
以下にまとめます。
救急車を呼ぶべき「緊急性の高いサイン」
以下の症状が一つでも見られる場合は、ぎっくり腰の激痛とは別に、より重篤な病気が隠れている可能性や、神経に深刻なダメージが及んでいる可能性があるため、迷わず救急車を呼ぶか、すぐに医療機関を受診してください。
排尿・排便障害がある(膀胱直腸障害)
-
- 尿が出にくい、尿意を感じない、尿が漏れてしまう(失禁してしまう)。
- 便意を感じない、便が出せない、便が漏れてしまう(失禁してしまう)。
- これは、脊髄の馬尾神経(腰から下の神経の束)が強く圧迫されている可能性があり、放置すると重篤な麻痺や機能障害が残ることがあります。ぎっくり腰の緊急事態の中で最も重要なサインです。
両足に強いしびれや麻痺がある
-
- 片足だけでなく、両方の足に強いしびれがある。
- 足に力が入らず、立てない、歩けない、足首や足の指が動かせないなどの麻痺症状がある。
- これは、馬尾神経の圧迫や、広範囲な神経障害を示唆している可能性があります。
発熱を伴い、全身状態が悪い
-
- 38℃以上の高熱があり、悪寒や震えを伴う。
- 腰痛だけでなく、全身の倦怠感、吐き気、食欲不振などが顕著。
- これは、脊椎の感染症(化膿性脊椎炎など)や、内臓疾患(腎盂腎炎など)の可能性があり、迅速な治療が必要です。
転倒や事故など、強い衝撃後に発症した腰痛
-
- 高い場所からの転落、交通事故、スポーツ中の激しい衝突など、明らかに大きな外力が加わった後に腰痛が発生した場合。
- 特に高齢者の場合、尻もちをついただけでも脊椎の圧迫骨折を起こしている可能性があります。骨折は、安静にしていても激痛が続くことが特徴です。
救急車を呼ばなくて良いケース(一般的なぎっくり腰)
上記の緊急性の高いサインが見られない場合は、たとえ痛みが強くても、慌てて救急車を呼ぶ必要はは無いとされています。
- 激しい痛みで動けないが、足のしびれや麻痺はない。
- 排尿・排便は問題なくできる。
- 熱はなく、全身状態も比較的良好。
このような場合は、以下の対処法を試みましょう。
- 最も楽な姿勢で安静にする:膝を立てて横向きになる、仰向けで膝の下にクッションを入れるなど、痛みが和らぐ姿勢を見つけて安静にします。
- 患部を冷やす(アイシング):発症から24~48時間以内であれば、炎症を抑えるために冷やしましょう。
- 家族や友人に助けを求める:一人で無理せず、移動の介助や日常生活のサポートを頼みましょう。
- 可能な範囲で医療機関を受診する:痛みが落ち着いたら、または家族などに付き添ってもらい、医療機関を受診しましょう。無理に歩く必要はなく、タクシーや自家用車で移動することも検討してください。
ぎっくり腰の激痛は大変つらいものですが、落ち着いて症状を判断することが大切です。
緊急性の高いサインを見落とさず、適切な行動をとるようにしましょう。