ウォーキングで発生しやすい怪我・痛み

スポーツによる怪我・痛み
ウォーキングは最も手軽で始めやすい運動ですが、不適切なフォーム、靴、あるいは過度な距離や強度によって、身体に負担がかかり、様々な怪我や痛みが発生することがあります。
特に、足首、膝、すね、そして腰といった下半身の関節や筋肉に、繰り返し負荷がかかることによるオーバーユース障害が多く見られます。

ここでは、ウォーキングで発生しやすい外傷や怪我を、主な部位ごとにまとめて解説します。

※接骨院では施術困難な外傷・怪我も情報として、まとめさせていただきます。

ウォーキングで発生しやすい怪我・痛み

足・足首の怪我

ウォーキングでは常に足が地面と接触するため、足や足首には大きな負荷がかかります。

  • 足底筋膜炎(そくていきんまくえん)
    • 症状: 足の裏(特にかかとや土踏まず)の痛み。特に朝起きて最初の一歩や、運動開始時に痛みが強く、動いているうちに軽減することが多い。
    • 原因: 長時間のウォーキング、硬い地面でのウォーキング、不適切なシューズ(クッション性の低い靴、合わない靴)、扁平足やハイアーチなどの足の構造的問題、ふくらはぎの柔軟性不足などが、足底筋膜に繰り返し負荷をかけ、微細な損傷や炎症を引き起こします。
    • 対処: 安静、アイシング、ストレッチ(特にふくらはぎや足裏)、インソールの使用、シューズの見直し。痛みが続く場合は医療機関を受診しましょう。
  • シンスプリント(脛骨過労性骨膜炎)
    • 症状: すねの内側下部の痛み。運動中や運動後に痛みが強く、進行すると安静時にも痛むことがある。
    • 原因: 長時間のウォーキング、急激なウォーキング距離や強度の増加、硬い路面でのウォーキング、不適切なシューズ、扁平足などが、すねの骨(脛骨)を覆う骨膜に炎症を引き起こします。
    • 対処: 安静(ウォーキングの中止または軽減)、アイシング、ストレッチ(特にふくらはぎや足首)、インソールの使用、シューズの見直し。痛みが続く場合は医療機関を受診しましょう。
  • 足関節捻挫(そくかんせつねんざ)
    • 症状: 足首の痛み、腫れ、内出血。ひどい場合は体重をかけられない。
    • 原因: 不整地(でこぼこ道、砂利道、傾斜地など)でのウォーキング中に足首をひねる、段差を踏み外すなど。
    • 対処: RICE処置(安静、冷却、圧迫、挙上)が基本です。痛みが続く場合や腫れがひどい場合は医療機関を受診し、靭帯の損傷度合いを確認することが重要です。
  • 外反母趾(がいはんぼし)/ 内反小趾(ないはんしょうし)
    • 症状: 足の親指(外反母趾)または小指(内反小趾)の付け根の痛み、変形。
    • 原因: 先の細い靴やヒールの高い靴、サイズの合わない靴を履いてウォーキングを続けることによる足指への圧迫。
    • 対処: 適切なシューズへの変更(幅広でつま先にゆとりのあるもの)、インソールの使用、足指の体操など。痛みが強い場合は医療機関を受診。
  • 疲労骨折(特に中足骨、脛骨など)
    • 症状: 特定の部位(足の甲、すねなど)の運動時痛。初期は運動中にのみ痛むが、進行すると安静時にも痛むようになる。
    • 原因: 骨に繰り返し加わる軽微なストレスが蓄積し、骨が修復する時間を上回ることで発生します。ウォーキング距離や強度の急増、硬い路面でのウォーキング、不適切なシューズ、栄養不足などが要因となります。
    • 対処: 直ちに運動を中止し、医療機関を受診しましょう。長期間の安静が必要となることがあります。診断と治療の遅れは重症化につながります。

 

膝の怪我

ウォーキングでは膝の曲げ伸ばしが繰り返されるため、膝にも負担がかかります。

  • 膝蓋大腿関節症(しつがいだいたいかんせつしょう)/ 膝蓋骨軟骨軟化症
    • 症状: 膝のお皿の裏側や周囲の痛み。特に階段の昇り降り、坂道の下り、長時間座った後の立ち上がりで痛みが強くなる。
    • 原因: 膝の曲げ伸ばしの繰り返しによる膝蓋骨へのオーバーユース。大腿四頭筋の筋力不足やバランスの悪さ、不適切なフォーム(ニーイン・トゥアウトなど)、X脚やO脚などのアライメント不良などが影響します。
    • 対処: 安静、アイシング、大腿四頭筋(特に内側広筋)の強化、ストレッチ。医療機関での診断と治療が必要です。
  • 腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)/ ランナー膝
    • 症状: 膝の外側の痛み。特にウォーキング中に痛みが始まり、休むと軽減するが、再開するとまた痛むことが多い。
    • 原因: 股関節から膝の外側を通る腸脛靭帯が大腿骨(太ももの骨)と擦れることで炎症を起こします。長時間のウォーキング、不適切なフォーム、股関節や臀部の筋力不足、足のアライメント不良などが関連します。
    • 対処: 安静、アイシング、ストレッチ(腸脛靭帯、臀部など)、股関節・臀部の筋力強化。痛みが続く場合は医療機関を受診しましょう。

 

腰・股関節の怪我

歩行時の姿勢や、下肢の動きと連動して腰や股関節にも負担がかかります。

  • 腰痛(筋・筋膜性腰痛、腰椎捻挫など)
    • 症状: 腰の重だるさ、張り、特定の動作での痛み。
    • 原因: 長時間のウォーキングにおける不適切な歩行姿勢(猫背、反り腰など)、体幹の筋力不足、下肢の柔軟性不足などが、腰部の筋肉や靭帯に過度な負担をかけます。
    • 対処: 急性期は安静アイシング。痛みが落ち着いたら温熱ケアストレッチ、そして体幹の強化(腹筋、背筋、殿筋など)が特に重要です。痛みが続く場合は医療機関を受診しましょう。
  • 股関節痛(股関節周囲炎、股関節のインピンジメントなど)
    • 症状: 股関節周辺の痛み、特に歩行時や脚を動かす際に痛む。
    • 原因: 長時間のウォーキングによる股関節への繰り返し負荷(オーバーユース)、股関節周囲の筋力不足や柔軟性不足、不適切な歩行フォーム。
    • 対処: 安静、アイシング、股関節周囲のストレッチや筋力強化。痛みが続く場合は医療機関を受診。

 

その他

  • 筋肉痛 / 肉離れ
    • 症状: 運動後の筋肉の痛み、張り(筋肉痛)。運動中に突然の激痛、へこみや腫れ(肉離れ)。
    • 原因: ウォーミングアップ不足、急激なウォーキング距離や強度の増加、筋肉の疲労や柔軟性不足。
    • 対処: 筋肉痛はストレッチ、温熱ケア、休息。肉離れはRICE処置を速やかに行い、医療機関を受診しましょう。
  • 靴擦れ / マメ
    • 症状: 皮膚の赤み、水ぶくれ、痛み。
    • 原因: サイズが合わない靴、新しい靴、靴下の素材や縫い目による摩擦。
    • 対処: 清潔な状態にし、絆創膏などで保護。水ぶくれは無理に潰さない。
    • 予防: サイズの合った、慣れた靴を履く、吸湿性・速乾性の良い靴下を着用する。

 

怪我の予防のために

ウォーキングにおける怪我のリスクを減らすためには、以下の点に注意することが非常に重要です。

  • 適切なシューズ選び(最も重要):
    • 自身の足の形や歩き方に合った、クッション性、安定性、通気性に優れたウォーキングシューズを選びましょう。
    • 店舗で専門スタッフに相談し、実際に試着して、つま先に1cm程度の余裕があり、かかとがしっかりフィットするものを選びましょう。
    • 靴は消耗品なので、定期的に買い替えを検討しましょう。
  • 正しいフォームの習得:
    • 目線をやや前方(10〜15m先)に向け、背筋を伸ばし、軽く顎を引く
    • 腕は軽く肘を曲げ、前後に自然に振る(肩に力を入れすぎない)。
    • かかとから着地し、足裏全体で体重移動を行い、親指の付け根で地面を蹴るように歩く。
    • 歩幅はやや広めに、速さよりリズムを意識する。
    • 呼吸はリズムに合わせて深く行う
  • 十分なウォーミングアップとクールダウン:
    • ウォーキング前には全身を軽く動かす動的ストレッチ(アキレス腱伸ばし、股関節回しなど)や、軽い歩行を5分程度行い、体を温めましょう。
    • ウォーキング後には使った筋肉の静的ストレッチ(ふくらはぎ、太もも、股関節、腰など)を丁寧に行い、クールダウンすることで疲労回復を促し、柔軟性を維持できます。
  • 段階的な運動量・強度の増加と休息:
    • 急激な距離や時間の増加は避け、無理のない範囲で徐々に運動量を増やしていきましょう。オーバーユースが怪我の主な原因となるため、適切な休息日を設けることが重要です。
    • 「週に10%まで」など、無理のない範囲で距離を伸ばしていく目安を持つと良いでしょう。
  • 筋力トレーニングと柔軟性の向上:
    • ウォーキングに必要な下半身の筋力(太もも、ふくらはぎ、お尻)や体幹の安定性を高める運動を取り入れましょう。
    • 全身の柔軟性、特に下半身(アキレス腱、ふくらはぎ、ハムストリングス、股関節)の柔軟性を高めることで、筋肉や関節への負担を軽減できます。
  • 適切な路面でのウォーキング:
    • できるだけアスファルト舗装のような硬い路面ばかりでなく、土の道や芝生など、クッション性のある場所も取り入れると、足や膝への負担を軽減できます。
  • 体調管理と水分補給:
    • 体調が悪い時や疲労が蓄積している時は無理せず休みましょう。
    • ウォーキング中もこまめな水分補給を忘れずに行いましょう。
  • 症状の早期発見と対処:
    • 痛みや違和感がある場合は無理せずウォーキングを中断し、必要であれば整形外科などの医療機関を速やかに受診しましょう。「少しの痛みだから」と我慢して続けることは、軽度な症状を重症化させる最大の要因ですし、長期的なパフォーマンス低下につながる可能性もあります。