水泳で発生しやすい怪我・痛み

スポーツによる怪我・痛み
水泳は全身運動であり、関節への負担が少ないとされていますが、特定の動作の繰り返しや過度な練習によって、筋肉や関節に特有の怪我が発生しやすいスポーツです。

特に、肩、膝、腰、そして耳や皮膚のトラブルが多く見られます。

ここでは、水泳で発生しやすい外傷や怪我を、主な部位ごとにまとめて解説します。

※接骨院では施術困難な外傷・怪我も情報として、まとめさせていただきます。

水泳で発生しやすい外傷・怪我

1. 肩の怪我(最も多い)

水泳は肩関節を酷使するスポーツであり、「スイマーズショルダー(水泳肩)」と呼ばれるように、肩の怪我が最も頻繁に発生します。

  • スイマーズショルダー(肩関節インピンジメント症候群、腱板炎など)
    • 症状: 泳ぐ際に肩の痛みが生じ、特に腕を上げる動作(プル動作)や、特定の方向へ動かすと痛みが強くなります。夜間痛を伴うこともあります。
    • 原因: クロールやバタフライなど、腕を頭上から回すストローク動作の繰り返しによる肩関節への過度な負担(オーバーユース)。肩のインナーマッスル(腱板)や滑液包の炎症、または腱が骨に挟まれることが主な原因です。不適切なフォーム、肩甲骨の動きの悪さ、体幹の不安定さなども影響します。
    • 対処: 安静が基本です。アイシング、炎症を抑える薬の使用、そして特に肩甲骨の安定化やインナーマッスルの強化、フォームの改善を中心としたリハビリテーションが重要です。痛みが引かない場合は整形外科を受診し、適切な治療を受けましょう。

 

2. 膝の怪我

平泳ぎのキック動作は、膝関節に特有の負担をかけることがあります。

  • 平泳ぎ膝(内側側副靭帯炎、鵞足炎など)
    • 症状: 膝の内側の痛み。特に平泳ぎのキック(膝を曲げて開き、伸ばす動作)の際に痛みが強くなります。
    • 原因: 平泳ぎのキック動作(特に膝を外側に開く、外反ストレス)の繰り返しによる膝の内側にある内側側副靭帯や、その周辺の腱(鵞足部)への過度な負担(オーバーユース)が原因です。
    • 対処: 安静が重要です。アイシング、ストレッチ、大腿内転筋やハムストリングスの強化、キックフォームの見直しなどが有効です。痛みが引かない場合は整形外科を受診し、薬や理学療法などの治療を受けましょう。

 

3. 腰の怪我

クロールやバタフライでの腰のひねりや反り、平泳ぎでのキック動作などで腰に負担がかかります。

  • 腰痛(筋・筋膜性腰痛、腰椎捻挫、椎間板ヘルニアなど)
    • 症状: 腰の重だるさ、張り、特定の動作での痛み。時に足への放散痛やしびれを伴うこともあります。
    • 原因:
      • クロール・バタフライ: 体幹を大きくひねる動作や、体を反らせる動作の繰り返し。
      • 平泳ぎ: キック時の腰の過度な反りや、腰を安定させる体幹筋の不足。
      • 不適切なフォーム、体幹の筋力不足や柔軟性の低下も影響します。
    • 対処: 急性期は安静とアイシング。痛みが落ち着いたら温熱ケア、ストレッチ、体幹強化(腹筋、背筋など)が特に重要です。痛みが続く場合や神経症状を伴う場合は整形外科を受診しましょう。

 

4. 首の怪我

クロールでの息継ぎや、バタフライでの首の動きの繰り返しで首に負担がかかります。

  • 頸部痛(頸椎捻挫、筋・筋膜性頸部痛など)
    • 症状: 首の痛み、首が動かしにくい、肩や腕への放散痛、しびれ。
    • 原因: クロールでの片側だけの息継ぎ(首のひねりすぎ)、バタフライでの頭部の過度な上げ下げ、フォームの悪さなどが原因で、首の筋肉や関節に負担がかかる。
    • 対処: 安静、アイシング(急性期)、温熱ケア(慢性期)、ストレッチ。痛みが続く場合や、しびれを伴う場合は整形外科を受診し、フォームの見直しも行いましょう。

 

5. 耳の怪我

水が耳に入ることで感染症のリスクが高まります。

  • 外耳炎(がいじえん)/スイマーズイヤー
    • 症状: 耳の穴(外耳道)の痛み、かゆみ、耳だれ、耳の閉塞感。重症化すると発熱やリンパ節の腫れを伴うことも。
    • 原因: プールなどの水が耳に入り、耳の中の皮膚がふやけて傷つきやすくなり、細菌や真菌が繁殖して炎症を起こす。
    • 対処: 医療機関(耳鼻咽喉科)を受診し、適切な治療を受けましょう。点耳薬や内服薬が処方されます。
    • 予防: 泳いだ後は耳をよく乾燥させる。耳栓を使用する。耳かきなどで耳の中を傷つけない。
  • 外骨腫(がいこつしゅ)/サーファーズイヤー
    • 症状: 耳の穴が狭くなることで耳垢が詰まりやすくなり、難聴や外耳炎を繰り返す。
    • 原因: 冷たい水の刺激を長期間繰り返し受けることで、外耳道に骨のコブ(骨性隆起)ができる。
    • 対処: 症状が軽ければ経過観察。耳栓の使用が最も有効な予防策です。症状が進行し、日常生活に支障をきたす場合は手術が必要となることもあります。

 

6. 皮膚の怪我

プールの水質や衛生状態、摩擦などによって皮膚トラブルが起こることがあります。

  • 皮膚炎(乾燥肌、湿疹など)
    • 症状: 皮膚の乾燥、かゆみ、赤み、湿疹。
    • 原因: プールの消毒剤(塩素)による皮膚の刺激、水による皮脂の過剰な除去、乾燥。
    • 対処: 泳いだ後はシャワーで塩素をしっかり洗い流し、保湿剤で皮膚を保護する。症状がひどい場合は皮膚科を受診。
  • 水いぼ、水虫、うおのめ、たこ
    • 症状: 各々の特徴的な皮膚症状。
    • 原因: プールサイドや更衣室での感染、摩擦。
    • 対処: 皮膚科を受診し、適切な治療を受けましょう。
    • 予防: プールサイドや更衣室ではサンダルを履く。皮膚を清潔に保つ。

 

7. 足首・足の怪我

キック動作やターン、プールの底での着地などで負担がかかります。

  • 足関節捻挫
    • 症状: 足首の痛み、腫れ。
    • 原因: ターンの際の不適切な足のつき方、プールサイドでの滑り、飛び込み時の衝撃。
    • 対処: RICE処置。痛みが引かない場合は医療機関を受診。
  • 足底筋膜炎(そくていきんまくえん)
    • 症状: 足の裏(特にかかとや土踏まず)の痛み。朝起きて最初の一歩や、運動開始時に痛みが強い。
    • 原因: キック動作での足裏への繰り返し負荷、ターンの際の足裏への衝撃、不適切なシューズ(プールサイドで使用するサンダルなど)。
    • 対処: 安静、アイシング、ストレッチ、インソールの使用。痛みが続く場合は医療機関を受診。

 

怪我の予防のために

水泳における怪我のリスクを減らすためには、以下の点に注意することが非常に重要です。

  • 十分なウォーミングアップとクールダウン: 特に肩、股関節、足首などの関節、そして全身の筋肉をしっかり温め、柔軟性を高めましょう。練習後もクールダウンで疲労回復を促しましょう。
  • 正しいフォームの習得: 各泳法の正しいフォームを身につけることが、特定の部位への過度な負担を減らし、怪我の予防に繋がります。コーチの指導を仰ぎ、定期的にフォームチェックを行いましょう。
  • 筋力トレーニングと柔軟性の向上: 特に体幹、肩周りの筋肉をバランスよく鍛え、柔軟性を高めることで、安定性が向上し、関節への負担を減らせます。
  • 適切な用具の使用:
    • 耳栓: 外耳炎や外骨腫の予防に有効です。
    • ゴーグル: 目の保護。
    • キャップ: 髪の保護やプールの衛生維持。
    • タオル: 泳いだ後の体を拭き、皮膚の乾燥を防ぐ。
  • プールの衛生管理: プール施設の衛生状態が良好であることを確認することも大切です。
  • 休息と栄養: 過度な練習は疲労を蓄積させ、怪我のリスクを高めます。十分な休息とバランスの取れた食事で体を回復させましょう。
  • 症状の早期発見と対処: 痛みや違和感がある場合は無理せず練習を中断し、必要であれば医療機関を受診しましょう。早めの対応が重症化を防ぎます。