は比較的安全なスポーツというイメージがありますが、重いボールを繰り返し投げる動作や、レーン上での独特な動きによって、特定の部位に負担がかかり、様々な外傷や怪我が発生する可能性があります。
特に、指、手首、肘、肩、腰といった、投球動作に直接関わる部位のオーバーユース(使いすぎ)による慢性的な痛みが多く見られます。
ここでは、ボウリングで発生しやすい外傷や怪我を、主な部位ごとにまとめて解説します。
※接骨院では施術困難な外傷・怪我も情報として、まとめさせていただきます。
ボウリングで発生しやすい外傷・怪我
1. 指の怪我(最も多い)
ボールの穴に指を入れ、重いボールをコントロールするため、指への負担が非常に大きいです。
- 突き指・指の捻挫/打撲/擦り傷/皮むけ
- 症状: 指の痛み、腫れ、熱感、内出血、皮のめくれ。
- 原因:
- ボールの穴に指が合っていない(きつすぎる、ゆるすぎる)。
- リリースの際に指がボールに引っかかったり、摩擦が生じたりする。
- ボールをドロップ(落とす)してしまう。
- 指をホールから抜く際に無理な力がかかる。
- 対処: 軽度であればアイシングとテーピングでの保護。皮むけは清潔にし、絆創膏などで保護。痛みが続く、腫れがひどい、変形している場合は、骨折や脱臼の可能性もあるため、整形外科を受診しましょう。
- 予防: 自分の指に合ったサイズのボールを選ぶ。指の太さや形状に合わせて、フィンガーテープやサムソックス(親指用サック)で調整する。
- 指の腱鞘炎
- 症状: 指の付け根や関節の痛み、腫れ、指の曲げ伸ばしがしにくい、指を動かすと「カクカク」と引っかかる(ばね指)などの症状が出ることもあります。
- 原因: ボールを握り込む動作や、リリースの際の指への繰り返しの負荷。
- 対処: 安静、アイシング、テーピングでの固定。痛みが続く場合は医療機関を受診し、薬や注射、理学療法などの治療を受けます。
2. 手首の怪我
重いボールをスイングし、コントロールする際に手首に大きな力がかかります。
- 腱鞘炎(けんしょうえん)
- 症状: 手首の痛み、腫れ、動かすと痛む。
- 原因: 重いボールを支え、スイングする際の繰り返しによる手首の腱への過度な負担(オーバーユース)。特に手首を反らせた状態で投げたり、不適切なコッキング(手首の角度)をしたりする場合に発生しやすいです。
- 対処: 安静、アイシング、サポーターやリストラップ(手首の固定具)での固定。痛みが引かない場合は医療機関を受診。
- 手関節捻挫(しゅかんせつねんざ)
- 症状: 手首の痛み、腫れ、内出血、動かすと痛む。
- 原因: ボールを投げる際の不意なひねり、ドロップボールなどで手首に急な衝撃が加わる。
- 対処: RICE処置(安静、冷却、圧迫、挙上)が基本です。痛みが続く場合は医療機関を受診しましょう。
3. 肘の怪我
投球動作の繰り返しで肘にも負担がかかります。
- 上腕骨内側上顆炎(じょうわんこつないそくじょうかえん)/ ゴルフ肘
- 症状: 肘の内側に痛みが生じ、特に手首を手のひら側に曲げたり、強く握り込んだりする際に痛みが強くなります。
- 原因: ボールを握り込む動作や、スイング、リリースの際の繰り返しによる肘の内側への過度な負荷(オーバーユース)。
- 対処: 安静が基本です。アイシング、ストレッチ(前腕屈筋群)、肘バンドの使用、フォームの見直しなどが有効です。痛みが引かない場合は整形外科を受診し、薬や注射、理学療法などの治療を受けます。
- 上腕骨外側上顆炎(じょうわんこつがいそくじょうかえん)/ テニス肘
- 症状: 肘の外側に痛みが生じ、特に手首を手の甲側に反らせたり、物を掴んで持ち上げたりする際に痛みが強くなります。
- 原因: 投球動作の繰り返しで肘の外側への負担がかかることや、オーバーユースが原因となることがあります。
- 対処: ゴルフ肘と同様に、安静、アイシング、ストレッチ、医療機関での治療が行われます。
4. 肩の怪我
ボールを大きくバックスイングし、フォワードスイングで投げる際に肩関節に大きな負担がかかります。
- 腱板炎(けんばんえん)/ 腱板損傷
- 症状: 腕を上げたり、特定の方向に動かしたりすると痛む。特にバックスイングやフォロースルーの際に痛みが増します。夜間痛を伴うこともあります。
- 原因: スイング動作の繰り返しによる肩のインナーマッスル(腱板)への過負荷や、不適切なフォームでの急激な負荷。オーバーなバックスイングも原因となります。
- 対処: 安静が重要です。アイシング、炎症を抑える薬の使用、そして肩甲骨の安定化やインナーマッスルの強化、フォームの改善を中心としたリハビリテーションが重要です。重度の損傷では手術が検討されることもあります。
- 肩関節インピンジメント症候群
- 症状: 肩を上げた際に、肩の前面や側面に痛みが生じます。特定の角度で腕を動かすと痛みが強くなることが多いです。
- 原因: 繰り返しの腕の上げ下ろし動作で、肩の腱や滑液包が骨に挟まり、炎症を起こす。肩甲骨の動きの悪さや、姿勢の悪さも影響します。
- 対処: 安静、アイシング、姿勢改善、肩甲骨周りのストレッチや筋力強化。
5. 腰の怪我
投球動作における腰の回旋や、前傾姿勢でのバランス維持、ボールを持ち上げる動作などで腰に負担がかかります。
- 腰痛(筋・筋膜性腰痛、腰椎捻挫、椎間板ヘルニアなど)
- 症状: 腰の重だるさ、張り、特定の動作での痛み。時に足への放散痛やしびれを伴うこともあります。
- 原因:
- 投球時の腰の過度な回旋や、体を反らせる動作。
- 不適切なバックスイング(大きすぎる、ブレる)。
- スライド不足による腰への負担集中。
- 体幹の筋力不足や柔軟性の低下。
- 対処: 急性期は安静とアイシング。痛みが落ち着いたら温熱ケア、ストレッチ、そして体幹の強化が特に重要です。痛みが続く場合や神経症状を伴う場合は整形外科を受診しましょう。
6. 膝の怪我
アプローチ時の歩行やスライド、投球後の体勢維持などで膝に負担がかかります。
- 膝蓋腱炎(しつがいけんえん)/ ジャンパー膝
- 症状: 膝のお皿のすぐ下(膝蓋腱部)の痛み。特にアプローチ時の踏み込みや、リリース後の体勢維持で痛みが強くなる。
- 原因: 投球時の膝の屈伸動作や、着地時の衝撃の繰り返しによる膝蓋腱への過度な負担(オーバーユース)。
- 対処: 安静が基本です。アイシング、ストレッチ、大腿四頭筋の強化、膝バンドの使用などが有効です。痛みが引かない場合は医療機関を受診しましょう。
- 半月板損傷(はんげつばんそんしょう)
- 症状: 膝の痛み、引っかかり感、ロッキング現象(膝が曲がったまま伸びない)。
- 原因: アプローチ時の急な膝のねじれや、着地時の衝撃。
- 対処: 医療機関を受診し、損傷の程度を診断してもらいます。保存療法で改善しない場合は手術が検討されます。
- 変形性膝関節症
- 症状: 膝の慢性的な痛み、特に歩き始めや立ち上がる時、階段の昇降時に痛む。進行すると変形や可動域制限が生じる。
- 原因: 長年のボウリングによる膝関節への繰り返し負荷、特に不適切なスライドや着地フォームが原因となることがあります。加齢も大きな要因です。
- 対処: 医療機関を受診し、保存療法(運動療法、薬、装具)が中心となります。重度の場合は手術が検討されます。
7. その他
- 足底筋膜炎(そくていきんまくえん)
- 症状: 足の裏(特にかかとや土踏まず)の痛み。朝起きて最初の一歩や、運動開始時に痛みが強い。
- 原因: アプローチ時の歩行やスライド、踏み込みによる足裏への繰り返し負荷、足に合わないシューズの使用。
- 対処: 安静、アイシング、ストレッチ、インソールの使用。痛みが続く場合は医療機関を受診。
- 肉離れ(筋挫傷)
- 症状: 運動中に「ブチッ」「ピキッ」という感覚と共に、太ももの裏(ハムストリングス)やふくらはぎに突然の激痛。
- 原因: ウォーミングアップ不足、筋肉の疲労、柔軟性の低下、急なアプローチ動作など。
- 対処: RICE処置を速やかに行い、医療機関を受診しましょう。
怪我の予防のために
ボウリングにおける怪我のリスクを減らすためには、以下の点に注意することが非常に重要です。
- 十分なウォーミングアップとクールダウン:
- プレー前には全身をしっかり温め、特に投球動作に関わる肩、肘、手首、腰、股関節、膝の関節を動かす動的ストレッチを重点的に行いましょう。
- プレー後には使った筋肉の静的ストレッチを行い、クールダウンすることで疲労回復を促し、柔軟性を維持できます。
- 正しいフォームの習得:
- インストラクターや経験者から指導を受け、体に負担の少ない効率的なフォームを身につけることが重要です。特に、無理なバックスイングを避ける、スムーズなスライドを心がける、体幹を使った投球を意識しましょう。
- 筋力トレーニングと柔軟性の向上:
- 投球動作に必要な体幹(腹筋、背筋)、肩周り、前腕、下半身の筋力をバランスよく鍛えましょう。
- 特に、肩甲骨周りや股関節、腰の柔軟性を高めるストレッチを継続的に行いましょう。
- 適切な用具の選択:
- ボール: 自身の筋力、投球スタイル、指のサイズに合った重さ、穴の開け方(ドリル)のボールを選びましょう。合わないボールは怪我の大きな原因となります。
- シューズ: 滑りやすさやグリップのバランスが取れた、ボウリング専用のシューズを履きましょう。スライドがスムーズに行えることが重要です。
- リストラップやテーピング: 手首や指の保護、サポートのために活用しましょう。
- 休息と栄養:
- 長時間の練習や連日のプレーは疲労を蓄積させ、怪我のリスクを高めます。適度な休息を設け、体の回復を促しましょう。
- バランスの取れた食事で、筋肉の回復に必要な栄養をしっかり摂りましょう。
- 症状の早期発見と対処:
- 痛みや違和感がある場合は無理せずプレーを中断し、必要であれば整形外科などの医療機関を受診しましょう。「少しの痛みだから」と我慢して続けることは、重症化を招く最大の要因です。
これらの情報を参考に、安全にボウリングを楽しみ、怪我なく長く競技を続けられることを願っています。