ゴルフで発生しやすい怪我・痛み

スポーツによる怪我・痛み
ゴルフは一見すると穏やかなスポーツに見えますが、クラブを繰り返しスイングする動作は、特定の筋肉や関節に大きな負担をかけます。

特に、腰、肩、肘、手首といった、スイングに直接関わる部位のオーバーユース(使いすぎ)による怪我が多く見られます。

また、不適切なフォームや準備不足も怪我のリスクを高めます。

ここでは、ゴルフで発生しやすい外傷や怪我を、主な部位ごとにまとめて解説します。

※接骨院では施術困難な外傷・怪我も情報として、まとめさせていただきます。

ゴルフで発生しやすい外傷・怪我

1. 腰の怪我(最も多い)

ゴルフスイングは腰を大きく回旋させる動作が含まれるため、腰への負担が非常に大きいです。

  • 腰痛(筋・筋膜性腰痛、腰椎捻挫、椎間板ヘルニア、腰椎分離症・すべり症など)
    • 症状: 腰の重だるさ、張り、特定の動作での痛み。ひどい場合は、足への放散痛やしびれを伴うこともあります。
    • 原因:
      • スイング時の過度な回旋: 特にフォロースルーで腰を強くひねる動作。
      • 体幹の筋力不足: スイング中の姿勢を安定させられず、腰に負担が集中する。
      • 柔軟性の低下: 股関節や胸椎の柔軟性が不足していると、腰で無理に回旋を補おうとする。
      • 不適切なフォーム: スエー(体が横に流れる)、リバースピボット(重心が反対に傾く)など。
      • 長時間の練習やプレー: 疲労の蓄積。
    • 対処: 急性期は安静アイシング。痛みが落ち着いたら温熱ケアストレッチ、そして体幹の強化(腹筋、背筋、お尻の筋肉など)が特に重要です。痛みが続く場合や神経症状を伴う場合は整形外科を受診しましょう。

 

2. 肘の怪我

テニス肘と同様に、ゴルフでも肘のトラブルはよく見られます。

  • 上腕骨内側上顆炎(じょうわんこつないそくじょうかえん)/ ゴルフ肘
    • 症状: 肘の内側に痛みが生じ、特に手首を手のひら側に曲げたり、強く握り込んだりする際に痛みが強くなります。物を持つ、ドアノブを回すなどの日常生活動作でも痛むことがあります。
    • 原因:
      • クラブを強く握り込む、手首を使いすぎたスイング(特にダウンスイングで肘に負担がかかる)。
      • 「すくい打ち」のような不適切なフォーム。
      • 手首や指を曲げる筋肉が肘の内側で付着する部分への繰り返しによる過度な負荷(オーバーユース)。
    • 対処: 安静が基本です。アイシング、ストレッチ(前腕屈筋群)、肘バンドの使用、フォームの見直し、ラケットの調整などが有効です。痛みが引かない場合は整形外科を受診し、薬や注射、理学療法などの治療を受けます。
  • 上腕骨外側上顆炎(じょうわんこつがいそくじょうかえん)/ テニス肘
    • 症状: 肘の外側に痛みが生じ、特に手首を手の甲側に反らせたり、物を掴んで持ち上げたりする際に痛みが強くなります。
    • 原因: ゴルフ肘とは逆に、フォロースルーで腕を伸ばし切る際に肘の外側に負担がかかることや、オーバーユースが原因となることがあります。
    • 対処: ゴルフ肘と同様に、安静、アイシング、ストレッチ、医療機関での治療が行われます。

 

3. 肩の怪我

スイング時の肩関節の大きな動きや、インナーマッスルへの負担が原因となります。

  • 腱板損傷(けんばんそんしょう)/ 腱板炎
    • 症状: 腕を上げたり、特定の方向に動かしたりすると痛む。特にテイクバックやフォロースルーの際に痛みが増します。夜間痛を伴うこともあります。
    • 原因: スイング動作の繰り返しによる肩のインナーマッスル(腱板)への過負荷や、不適切なフォームでの急激な負荷。
    • 対処: 安静が重要です。アイシング、炎症を抑える薬の使用、そして肩甲骨の安定化やインナーマッスルの強化、フォームの改善を中心としたリハビリテーションが重要です。重度の損傷では手術が検討されることもあります。
  • 肩関節インピンジメント症候群
    • 症状: 肩を上げた際に、肩の前面や側面に痛みが生じます。特定の角度で腕を動かすと痛みが強くなることが多いです。
    • 原因: 繰り返しの腕の上げ下ろし動作で、肩の腱や滑液包が骨に挟まり、炎症を起こす。肩甲骨の動きの悪さや、姿勢の悪さも影響します。
    • 対処: 安静、アイシング、姿勢改善、肩甲骨周りのストレッチや筋力強化。

 

4. 手首の怪我

クラブを握る、クラブを振る際の衝撃吸収など、手首にも大きな負担がかかります。

  • 手関節捻挫(しゅかんせつねんざ)
    • 症状: 手首の痛み、腫れ、動かすと痛む。
    • 原因: ダフった際の衝撃、クラブのヘッドが地面に強く当たった際の不意なひねり。
    • 対処: RICE処置(安静、冷却、圧迫、挙上)が基本です。サポーターやテーピングで固定し、痛みが引かない場合は医療機関を受診しましょう。
  • TFCC損傷(三角繊維軟骨複合体損傷)
    • 症状: 手首の小指側(特に手のひら側)に痛みが生じ、手首をひねったり、小指側に曲げたりする動作で痛みが強くなります。
    • 原因: ダフった際の衝撃や、手首を不自然にひねるスイングによって、手首の安定に関わる靭帯と軟骨の複合体が損傷します。
    • 対処: 安静、固定(サポーターなど)、炎症を抑える治療。重度の損傷では手術も検討されます。

 

5. 膝の怪我

スイング時の体重移動や、踏み込み、不整地でのバランス保持で膝に負担がかかります。

  • 膝靭帯損傷(内側側副靭帯など)
    • 症状: 膝の痛み、腫れ、不安定感。
    • 原因: スイング時に膝が不自然にねじれる、特に右膝(右利きの場合)に体重がかかりすぎたり、伸び切った状態で負荷がかかったりする。
    • 対処: 整形外科を受診し、MRIなどの精密検査を受けましょう。損傷の程度により、保存療法(装具固定、リハビリ)または手術が検討されます。
  • 半月板損傷(はんげつばんそんしょう)
    • 症状: 膝の痛み、引っかかり感、ロッキング現象(膝が曲がったまま伸びない)。
    • 原因: スイング時の膝のねじれや、体重移動による衝撃。
    • 対処: 医療機関を受診し、損傷の程度を診断してもらいます。保存療法で改善しない場合は手術が検討されます。

 

6. その他

  • 首の痛み
    • 症状: 首の痛み、首が動かしにくい、肩や腕への放散痛。
    • 原因: スイング時の不適切な頭の固定、過度な首の回旋、前傾姿勢の維持など。
    • 対処: 安静、ストレッチ、姿勢改善。
  • アキレス腱炎
    • 症状: アキレス腱周辺の痛み、腫れ。
    • 原因: 繰り返しの歩行やスイング時の踏み込みによる負荷。
    • 対処: 安静、アイシング、ストレッチ。

 

怪我の予防のために

ゴルフにおける怪我のリスクを減らすためには、以下の点に注意することが非常に重要です。

  • 十分なウォーミングアップとクールダウン: プレー前には特に腰、肩、股関節、手首などの関節と筋肉をしっかり温め、柔軟性を高めましょう。プレー後にもクールダウンで疲労回復を促しましょう。
  • 正しいスイングフォームの習得: プロや経験豊富なコーチの指導を受け、体に負担の少ない効率的なスイングを身につけることが最も重要です。
  • 筋力トレーニングと柔軟性の向上:
    • 体幹強化: スイング中の安定性を高め、腰への負担を軽減します。
    • 股関節の柔軟性: 腰への負担を減らし、スムーズな回旋を促します。
    • 肩甲骨周りの安定性: 肩への負担を減らし、適切なスイング軌道を作ります。
    • 前腕の柔軟性: 肘や手首の負担を軽減します。
  • 適切な用具の選択:
    • クラブ: 自身の体格やスイングスピードに合ったクラブの重さや硬さ(シャフトのフレックス)を選びましょう。
    • シューズ: ゴルフ専用のシューズ(安定性、グリップ力のあるもの)を履きましょう。
  • 休息と栄養: 長時間の練習や連日のラウンドは疲労を蓄積させ、怪我のリスクを高めます。十分な休息とバランスの取れた食事で体を回復させましょう。
  • 症状の早期発見と対処: 痛みや違和感がある場合は無理せずプレーを中断し、必要であれば整形外科などの医療機関を受診しましょう。早めの対応が重症化を防ぎます。

これらの情報を参考に、安全にゴルフを楽しみ、怪我なく長くプレーを続けられることを願っています。