ウェイトトレーニング・筋トレで発生しやすい怪我・痛み

スポーツによる怪我・痛み
ウェイトトレーニングは筋力向上や健康維持に非常に効果的ですが、誤ったフォーム過度な重量設定不十分なウォームアップ休息不足などが原因で様々な外傷や怪我が発生する可能性があります。

特に、オーバーユース(使いすぎ)による慢性的な痛みや、急性外傷(一度の大きな負荷による損傷)が多いです。

ここでは、ウェイトトレーニング・筋トレで発生しやすい外傷や怪我についてまとめていきます。

※接骨院では施術困難な外傷・怪我も情報として、まとめさせていただきます。

ウェイトトレーニング・筋トレで発生しやすい怪我・痛み

1. 腰の怪我(最も多い)

多くの種目で体幹の安定が求められるため、腰への負担は大きいです。

  • 腰痛(筋・筋膜性腰痛、腰椎捻挫、椎間板ヘルニア、腰椎分離症・すべり症など)
    • 症状: 腰の重だるさ、張り、特定の動作での痛み。ひどい場合は、足への放散痛やしびれを伴うこともあります。
    • 原因:
      • スクワットやデッドリフトでのフォーム不良: 腰が丸まる(ラウンドバック)ことや、過度な反り(ハイパーエクステンション)など。
      • 体幹の筋力不足: 重量を支えきれずに腰に負担が集中する。
      • 不適切な重量設定: 自身の筋力レベル以上の重さでトレーニングを行う。
      • 休息不足: 疲労が蓄積し、筋肉や関節が回復しきれない。
    • 対処: 急性期は安静アイシング。痛みが落ち着いたら温熱ケアストレッチ、そして体幹の強化が特に重要です。痛みが続く場合や神経症状を伴う場合は整形外科を受診しましょう。

 

2. 肩の怪我

ベンチプレスやショルダープレスなど、肩関節を大きく動かす種目で発生しやすいです。

  • 肩関節インピンジメント症候群(スイマーズショルダー)
    • 症状: 肩を上げたり、特定の方向に動かしたりすると痛む。特にベンチプレスでバーベルを下ろす際に痛みが増すことがあります。
    • 原因: 繰り返しの腕の上げ下ろし動作で、肩の腱や滑液包が骨に挟まり、炎症を起こす。ベンチプレスで深く下ろしすぎる、肩甲骨の動きが悪いなどが影響します。
    • 対処: 安静アイシング、炎症を抑える薬の使用、そして肩甲骨の安定化やインナーマッスルの強化、フォームの改善を中心としたリハビリテーションが重要です。
  • 腱板損傷(けんばんそんしょう)/ 腱板炎
    • 症状: 肩を上げたり、特定の方向に動かしたりすると痛む。夜間痛を伴うこともあります。
    • 原因: ベンチプレスやショルダープレスなどでの過度な負荷、不適切なフォームでの急激な負荷。
    • 対処: 安静が重要です。アイシング、炎症を抑える薬の使用、リハビリテーションによる筋力強化やストレッチなどを行います。重度の損傷では手術が検討されることもあります。
  • 肩鎖関節炎(けんさかんせつえん)
    • 症状: 鎖骨の外側端(肩の先端部分)の痛み。特にバーベルを持ち上げた時や、腕を反対の肩に回した時に痛む。
    • 原因: ベンチプレスで肩に重量が乗りすぎている、バーベルを下ろす位置が鎖骨付近になっているなど。
    • 対処: 安静にし、炎症が引けば痛みが消失することが多いですが、適切なフォームでトレーニングしないと再発しやすいです。

 

3. 肘の怪我

プレス系、カール系など、肘関節を使う種目で負担がかかります。

  • 上腕骨内側上顆炎(じょうわんこつないそくじょうかえん)/ ゴルフ肘
    • 症状: 肘の内側に痛みが生じ、特に手首を手のひら側に曲げたり、強く握り込んだりする際に痛みが強くなります。
    • 原因: バーベルカールやダンベルカールなど、手首を返す動作やクラブを強く握り込む動作の繰り返しによる過度な負荷(オーバーユース)。
    • 対処: 安静が基本です。アイシング、ストレッチ(前腕屈筋群)、肘バンドの使用、フォームの見直しなどが有効です。痛みが引かない場合は整形外科を受診し、薬や注射、理学療法などの治療を受けます。
  • 上腕骨外側上顆炎(じょうわんこつがいそくじょうかえん)/ テニス肘
    • 症状: 肘の外側に痛みが生じ、特に手首を手の甲側に反らせたり、物を掴んで持ち上げたりする際に痛みが強くなります。
    • 原因: トライセップスエクステンションなど、肘を伸ばす動作の繰り返しによる過度な負荷。
    • 対処: ゴルフ肘と同様に、安静、アイシング、ストレッチ、医療機関での治療が行われます。

 

4. 手首の怪我

バーベルやダンベルを握る、押す、引く動作で手首に大きな負担がかかります。

  • 腱鞘炎(けんしょうえん)
    • 症状: 手首の痛み、腫れ、動かすと痛む。特定の動作で「キュッキュッ」という摩擦音(きしむ音)がすることもあります。
    • 原因: バーベルやダンベルを握る際に手首が反ったまま高重量を扱う、不適切なグリップ、リストカールなどの繰り返し。
    • 対処: 安静アイシング、サポーターやリストラップでの固定。痛みが引かない場合は医療機関を受診。
  • 手関節捻挫(しゅかんせつねんざ)
    • 症状: 手首の痛み、腫れ、動かすと痛む。
    • 原因: 高重量を扱う際に手首を不自然にひねる、不適切なフォームで手首に過度な負担をかける。
    • 対処: RICE処置(安静、冷却、圧迫、挙上)が基本です。

 

5. 膝の怪我

スクワットやレッグプレスなど、下半身の種目で膝に大きな負担がかかります。

  • 膝蓋腱炎(しつがいけんえん)/ ジャンパー膝
    • 症状: 膝のお皿のすぐ下(膝蓋腱部)の痛み。特にスクワットの下降時や、レッグエクステンションの動作で痛みが強くなる。
    • 原因: スクワットやレッグプレスの繰り返しによる膝蓋腱への過度な負担(オーバーユース)。
    • 対処: 安静が基本です。アイシング、ストレッチ、大腿四頭筋の強化、膝バンドの使用などが有効です。痛みが引かない場合は医療機関を受診しましょう。
  • 半月板損傷(はんげつばんそんしょう)
    • 症状: 膝の痛み、引っかかり感、ロッキング現象(膝が曲がったまま伸びない)。
    • 原因: スクワットでの膝の過度なねじれや、深くしゃがみこみすぎることによる負荷。
    • 対処: 医療機関を受診し、損傷の程度を診断してもらいます。保存療法で改善しない場合は手術が検討されます。

 

6. 肉離れ(筋挫傷)

急な負荷や疲労が蓄積した際に起こりやすいです。

  • 症状: 運動中に「ブチッ」「ピキッ」という感覚と共に、太ももの裏(ハムストリングス)、太ももの前(大腿四頭筋)、ふくらはぎ(腓腹筋)などに突然の激痛。内出血や腫れを伴うこともあります。
  • 原因: ウォーミングアップ不足、筋肉の疲労、柔軟性の低下、高重量での急な動作(特にエキセントリック収縮時)など。
  • 対処: RICE処置を速やかに行い、医療機関を受診しましょう。適切な対処を行い、再発予防に努めることが重要です。

 

7. 首の怪我

スクワットやデッドリフトでの首の位置、ショルダープレスなどで負担がかかります。

  • 頸部痛(頸椎捻挫、筋・筋膜性頸部痛など)
    • 症状: 首の痛み、首が動かしにくい、肩や腕への放散痛、しびれ。
    • 原因: スクワットでバーベルを担ぐ際に首に過度な力がかかる、デッドリフトで頭を過度に上げてしまう、フォームの悪さなどが原因で、首の筋肉や関節に負担がかかる。
    • 対処: 安静、アイシング(急性期)、温熱ケア(慢性期)、ストレッチ。痛みが続く場合や、しびれを伴う場合は整形外科を受診し、フォームの見直しも行いましょう。

 

怪我の予防のために

ウェイトトレーニングで怪我のリスクを減らすためには、以下の点が非常に重要です。

  1. 正しいフォームの習得:
    • トレーニングを始める前に、各種目の正しいフォームをしっかりと学び、実践しましょう。鏡を見たり、トレーナーに指導を受けたりするのが効果的です。
    • 高重量を扱う前に、低重量で正しいフォームを体に覚えさせることが不可欠です。
  2. 適切な重量設定と漸進性過負荷:
    • 無理のない重量から始め、徐々に負荷を上げていく漸進性過負荷の原則を守りましょう。急激な重量アップは怪我のリスクを高めます。
    • 「もう1回挙げられる」という余裕を残すくらいの重量設定も大切です。
  3. 十分なウォーミングアップとクールダウン:
    • トレーニング前には全身を温める有酸素運動(5〜10分)と、これから鍛える部位の動的ストレッチをしっかり行いましょう。
    • トレーニング後には、使った筋肉の静的ストレッチを行い、クールダウンすることで疲労回復を促し、柔軟性を維持できます。
  4. 筋力と柔軟性のバランス:
    • 特定の筋肉ばかり鍛えるのではなく、拮抗筋(反対の働きをする筋肉)もバランス良く鍛えることで、関節の安定性が向上し、怪我のリスクが減ります。
    • 定期的なストレッチやモビリティエクササイズで関節の可動域を確保し、筋肉の柔軟性を高めましょう。
  5. 適切な休息と栄養:
    • 筋肉は休息中に回復し成長します。同じ部位のトレーニングを連日行うのは避け、十分な休息日を設けましょう。
    • バランスの取れた食事、特にタンパク質の摂取は筋肉の回復と成長に不可欠です。
  6. 適切な用具の使用:
    • トレーニングシューズ: 安定性があり、滑りにくいものを選びましょう。
    • リストラップやベルト: 高重量を扱う際に手首や腰をサポートするのに有効ですが、依存しすぎず、自力で体を支える筋力も養うことが重要です。
  7. 症状の早期発見と対処:
    • トレーニング中に痛みや違和感を感じたら、無理せずすぐに中断しましょう。「効いている痛み」と「悪い痛み」を区別し、後者の場合は休息を取るか、必要であれば医療機関を受診しましょう。

これらの予防策を実践することで、ウェイトトレーニングを安全に、そして効果的に継続することができます。